第6話 異文化コミュニケーション

「民家の真上に着陸してしまっていたなんて……。やっとの到着に舞い上がって、確認を怠っていたワタシのミスだ。本当に申し訳ないっ……!」

「う、うん……」

 

 謝罪とともに、叩きつけんばかりに頭を下げられてしまう。でも、私の視線はキョロキョロとあちこちに動いて落ち着かない。


「かならず償わせてもらうつもりだけれど、すぐに元通り家を返すことは難しいんだ。だから……」


 幼女が必死になんか言ってるんだけど、あんまり耳に入ってこない。さっきから、会話に集中できてない。

 なぜって私の目、今いるこの空間の様相に釘付けなのである。


(ここがっ……ユゥフォオーの中……!)

 

 これがモノホンなんだ。そう考えると、なんかすごい。

 

 思ってたほどメカメカしくはない。ウチを上から綺麗に押し潰せる大きさだっただけあって、入ってみれば中もかなり広い。

 幼女と机を挟んで正座してるここはリビングみたいな生活感があって、見回せばいくつかノブ付きの扉も見える。あれは寝室とか、トイレとかかな?

 乗り物っていうより、ちょっとしたホテルの一室みたいだ。

 

「……ええと。ワタシの話、聞いてもらえているだろうか」

「ぁえっ!? いや、えっとその……!」

 

 聞いてませんでした。ごめんなさい。

 

「やはり、落ち着かないだろうか。君に……危害など加えるつもり、ないけれど。それでも、どうしても、警戒してしまうかな……」

「や、それは違……っ。そんな……こと、ないよ? ここ、思ってたよりは落ち着けるよ。緊張は、ちょっとしてるかもだけどね。あはは……」

 

 イメージしてた通りの、運転席と手術台みたいな光景だったら……プレッシャーすごかっただろうなぁ。会話すらマトモにできる自信ない。

 でもここの雰囲気は、お世辞でもなく本当に……なんていうか、悪くはない。

 

「そ、そうか! それなら、なによりなんだ。どうか遠慮せず楽にして、寛いでいて欲しいんだ」

 

 申し訳なさそうだった表情を少し緩めて、いくらか安心した様子。

 

「それじゃあ……あらためて、話をさせてもらってもいいかな。説明させてほしいんだ。ワタシのこと……ワタシの、地球での主な目的について」

「は、はい……」

 

 正座する私。

 

 幼く可愛らしい声色とはチグハグなイマイチ可愛げのない言い回しで、宇宙人幼女は語り始める。

 私も謎に畏まって、一先ずはピシリとしっかり聞く姿勢。背筋、ピーン。


 

「ワタシは遠い遠い銀河の果ての星からやってきたわけなのだが、見ての通り、そこに住まう種族はな、肉体の構造的観点からは……地球人と、大差ないらしいんだ」

「どう見ても……普通に人間、ちっちゃい女の子だもんね」


「そしてどうやら、ワタシたちの種族は……地球人との間に、子を成すことができるらしいんだ」

「そ、そう……。まぁ、うん、なるほど」


「そしてその方法は、だな」


 

 そこで一度言葉を切り、小さな人差し指を唇に添えて、続ける。


 

「一言で説明するとだな……ワタシは、口づけで妊娠する」

「え?」

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