第2話 宇宙人の目的

 高校一年生としての学校生活最後の一日を終え、明日から始まる春休みという期間の過ごし方を考えながら帰宅した私──白波普しらなみあまねの前に、突如舞い降りたる非日常。

 

 それなりに綺麗に使えていた小さな一軒家を、べしゃりと真上から押しつぶしてくれている未確認飛行物体のようなもの。

 そして……その中から目の前に降り立った、小柄な少女のようなもの。

 

「縺薙%縺ッ譌・譛ャ縺ァ縺吶h縺ュ?溽「コ縺九↓逹?縺?◆縺ョ縺ァ縺吶h縺ュ?」

「こわいこわいこわい!」

 

 テレビの倍速逆再生みたいな未知の怪音を発しながら、肩から提げている小さな鞄に手を突っ込んで何かを取り出す少女。


 え、なに……?


 あれは……なんだろう、ゼリー飲料……?

 普通にコンビニとかで売ってありそうな形をしたパックのキャップを外し、ずごご、と音を立てて吸い、10秒足らずで飲み干した。そして。

 

「これで意思の疎通ができるはずだ。はじめましてだ、地球の日本人」

「喋った!」


 めちゃくちゃ流暢な日本語で話しかけられてしまった! しかも今、地球って言った……?

 思わず、私は直球で訊ねてしまう。


「あなた……は、え? うちゅう、じん……?」


 その言葉を聞いて少女は、にんまりと笑みを浮かべる。


「フフ、フフフ。やはりワタシの発明は完璧だなっ。うん、そうだ。ワタシは地球外生命体……いわゆる、宇宙人ってやつになるんだ」


 ん? 笑ってる……? なんか、うれしそう……? 一瞬、普通にかわいいと思ってしまった。

 


 でも……宇宙人?

 


「み、みえない……。そうは見えない」


 そりゃ、明らかに日本人じゃないとは思えるけども。それでもまだ、ただの少女……いや、幼女……。

 あっ! よく見たら頭から変な触覚みたいなのが生えてる!? ……いやでも、アクセサリーだかコスプレアイテムだかの類って言われた方が、まだしっくりくるし……。

 

「まあ、だろうな。ワタシたちの種族の肉体的な構造は、地球人のそれと酷似しているらしいからな。そしてそれが、ワタシが地球にまで来た理由にも繋がるわけだな」

 

「地球に来た、理由……?」

「そうだ! ワタシはな……っ」

 

 そこで一度、もったいぶるように言葉を区切って。くるりと反転、私に背を向け、両手をめいっぱいに大きく広げて。

 雲ひとつない青空を仰いだ彼女は、その空に負けないくらい晴れやかな声で、言った。

 



「ワタシは地球人に、やってきたんだ!」

 


 この子は、なんと?

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