婚活ウチューじん!!

TH

第一章

第1話 プロローグ

「約束するよ。この手に誓う」



 あの子を、私を、救ってくれた。小さな小さな、この手に誓う。



「目的を果たす、その日まで。……ううん、たとえ、それを成した後だって。いつも、いつでも、いつまでも」



 主人あるじに仕える騎士ナイトのように。ひざまずいたまま、想いを込めて。その手の温度を確かめる。

 


 私は、。この子の味方で在り続けよう。どんなときでも……。きっと、ずっと。

 


「支え続ける。約束するよ」



 ・


 ・


 ・


 心の底から混乱した時、人は、笑ってしまうものらしい。

 

「…………ふっ、ふふふ。ははっ……」


 少なくとも私は、そうなった。

 目の当たりにした理解を飛び越す光景に、ただただ引きつった笑いが浮かぶばかりだった。

 


 我が家が、UFOペシャンコになってました。

 


 わーお。

 

「作ったばっかの、ちくぜんに……」

 ひとくちも食べることなくダメになってしまったであろう、大好物の筑前煮。奮発して鶏肉多めにして、たくさん作っておいたのになあ。朝、家出る前に少しくらい食べておけばよかった……。なんて。

 この状況で出てくるにしては、割としょうもない嘆きをぽつり、こぼした。

 

 その時だった。



 ウィーーーーン……。

 


「えっ……」


 エレベーターと同じような開閉音。UFOの窓(?)が開いてゆく。

 そして、その奥からは……人影が!?

 

(うっ、宇宙人っっ!?)

 

 ぶわり。一気に恐怖が全身に広がる。別にオバケの類は信じてないし、宇宙人の存在に対してだって似たような認識だった。……けど!

 こんなにも現実離れした状況で、『いやいや宇宙人なんているわけないし〜笑』なんて笑い飛ばせるほど私は肝が座ってない!

 とにもかくにも混乱してて、飛行してない未確認物体の中から現れようとしてる謎の存在に対して、ただただ子供みたいに怯えることしかできなくて。


 ザッ。


「ひっ!」


 怖い。怖い! 『何か』が私に向かってくる! 歩いてるっ、近づいてくる!

 どうしよう。そうだテレビで観たことある。このあと私は捕まって、キャトルなんちゃらとかされて、脳みそに何かしら埋め込まれちゃったりするんだ……!

 混乱してる。混乱してる。混乱してる。


「ぅあ……ぁ、っぐ」


 怖いのに。いや、怖いからこそ……足が、動かない。その場から一歩も動けない。目を逸らすこともできない。

 だからその姿が、イヤでも私の目に飛び込んでくる。

 

 ごくり。息を呑む。

 

 それは、いつだったかテレビか本かで見たような、てっぺんからつま先まで灰色のツルリとした無機質な体に、ギョロリと大きすぎる黒い目玉──

 

「……へ?」

 

 といった風貌では、なく。


 思わずマヌケな声を漏らした私の前に現れたのは。

 ほんのり赤みが差した肌色の、壊れてしまいそうに小っちゃな体躯。それをピチッと引き締めるのは、面積少なめ黒色のシンプルなインナー風の装い。くりくりとしたパッチリおめめは、日本人離れした蒼く澄んだ瞳。

 撫でるように吹いた風にふわりと弄ばれ、さらさらと流れ落ちる白銀の長髪。

 これって……。

 

「お、女の子……?」

 

 そう。現れたのは……。

 私のイメージしてた宇宙人みたいな姿なんかじゃなくて。なんだか……ふつうの、人間の、女の子で。

 そして、呆気にとられて立ち尽くす私の存在に、その少女もどうやら気づいた様子。

 目の前まで来て立ち止まって、真っ直ぐに私と目を合わせて、ゆっくり、ゆっくりと……口を開く。

 


「──」

 


 その、いとけない口元から紡がれる一言が。

 

 〝私たち〟の物語の、始まりとなる────

 



「──縺ゅ↑縺溘?螂ウ諤ァ縺ァ縺吶°?」

 

「なんて?」

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