第5話

「お前さ、チヨコをヤリ捨てしたんだろ?サイテー野郎だよな。」

オサムの家からの帰り道、シュウはチヨコとその友人たちに囲まれていた。

チヨコは泣いていて、なぜか一緒に泣いている女と、中途半端なツーブロック頭の男と背が低くて金髪の根元が黒くなっている男。

髪だせえな。俺こいつらに殴られるのかな。やだなぁ。

一緒に泣いていた女が「チヨコに謝れよ!」と言ってシュウを睨みつけるので、そのまま目を合わせていたら、顔を赤らめて目をそらす。

それを見ていたチビ金髪が「聞いてんのかよごらぁ!」と怒鳴る。

ごらぁ、って。シュウはつい吹き出す。

「何笑ってんだよ!なめてんのか!」

「なめてないですけど。つうか、関係ない人は帰ってもらえないっすか?」

「はぁ?ふざけんじゃねえぞ!」

チビ金髪がシュウの顔を殴りつける。

あ、やっぱ殴られた。チビのくせに普通に痛い。

そして次の瞬間、チヨコがチビ金髪を平手打ちした。

「何すんのよ!そんなことするためにあんたたち呼んだんじゃないから!」

え?じゃあ何のため呼んだんだよ?とそこにいた全員が思ったに違いない。俺を含め。チビ金髪は切なそうに頬を抑えてただ立っていて、こっちが気の毒になる。

「シュウ君、大丈夫?ごめんね。私、こんなことになるって思ってなくて・・・ただ、シュウ君が私のことブロックしたのがショックで。私、簡単にエッチしたりしないんだよ。」

むっちゃ迫ってきて自分で服脱いでたけどな・・・と思ってもとても言える空気じゃない。

「いや、いいですよ。俺が悪かったから。でもチヨコさんから毎日20回くらい連絡来るから、俺どうしていいかわかんなくなって。ブロックとか本当、ごめんなさい。」

「私、シュウ君が好きなだけなんだよ。」


「ちょ。チヨコ、うちらもう先帰るよ。ほら、行こう!」ともう一人の女がチビ金髪とツーブロックの手を引く。このツーブロック何にも喋らなかったな。


「チヨコさん、本当にごめん。でさ。俺、彼女とか今作るつもりもないんです。」

「・・・チヨのこと、嫌いになった?さっき友達が殴っちゃったし。」

つうか、そもそも俺好きとか言ったっけ。なんてこれも思っても言えない。

「チヨコさんのことは嫌いじゃないけど、でも、俺しょっちゅう女の子と遊んだりとか、無理なんです。」

「チヨ、殴ってなんて言ってないからね!ただついてきてもらっただけで。」

「もういいです、それは。でもごめんなさい。俺、チヨコさんとは付き合えません。」

チヨコの目にみるみる涙がたまっていく。

「うぇえ」

うわ、参ったな。

「本当ごめんなさい。俺にできることあったら。」

「うぇええ。じゃあ、またしてよ!」

「え。いや、それは、ダメです。他のことで。」

「うぇええええ」

「チヨコさん、俺なんかやめた方がいいですよ。モテるじゃないですか。」

「ううぅ、じゃあ・・・キスだけでもいいよ。」

参ったな。なんでこういうのを求めてくるんだろう。話かみ合わないし。

「いいですけど、これで最後ですよ。」

「うぇええ、嫌だぁ。最後ならしないでいい!うわぁああん。」

「ごめん、そんな泣かないで。」

「あたし・・・本当にシュウ君が好きなんだよ。シュウ君が転校してきた時から、ずっと好きだったんだからぁ!お願い。嫌いにならないで。友達でいて。」

「ごめんなさい。俺、チヨコさんがそこまで思ってくれてるのわからなくて。俺なんか、もうやめた方がいいですよ。サイテー野郎ですから。まだ俺、ガキなんです。ごめんなさい。」

チヨコは少しずつ泣き止む。

「・・・もういいよ。大丈夫。」

「大丈夫ですか。じゃあ、家まで送ります。」

「だから!そういう優しいのとかいらないから!」

「あ、そうですよね。じゃあ、ここで。」

「ここでなんて、ひどいよ!」

どっちなんだ。

女ってやっぱ意味不明だ。

その時シュウの携帯が鳴った。

それは、シュウが一番会いたい人からだった。

「チヨコさん、ごめんなさい。俺やっぱりここで帰ります。」

「え、ちょっとひど」

「もしもし。」

「出ちゃってるし!信じられない。最悪!」

シュウには、もうチヨコの声すら聞こえなかった。

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