第4話
カナは、佐藤と昼間のデートを楽しんだ。ランチをして買い物をして、水族館に行った。水槽を眺めるカナを佐藤は愛おしそうに見つめる。
「ね、佐藤さんこれって、何人分味噌煮にできるかな。」
「はは。全部だと学校給食にもできそうだね。僕はカナさんの味噌煮なら毎日でも平気だな。3年かけてでも食べるよ。」
「頼もしいわね。」
「カナさん、少し早いけど食事いこうか?」
「どこか予約してる?」
「あ、ごめん、していないんだけど、今日は僕がいつも行く和食のお店にカナさん連れて行きたくて。そこの大将にはこっち来てからいつもよくしてもらってて。予約なしでもだいたい空いてるんだ。旨いよ。」
「ねぇ佐藤さん、その前にどこか、静かなとこで、どこかの部屋とかで話さない?」
「ふぇ?え。あ、や、え!」
「何よそれ。」カナはけらけらと笑う。
「いや、その・・・いいんですか?行きますよ。」
「うん、私ね。佐藤さんとお酒の勢いとか嫌なんだ。」
「カナさん・・・」
「だから今からがいい。でも、ひとつ言っていいかな。」
「もも、もちろん!なんでも言って。カナさんが嫌がることは絶対にしません。」
「私さ、本当は久しぶりすぎて不安なの。いい歳して恥ずかしいけど、自信ないんだ。」
「うげえ、可愛い!あ、声に出ちゃった。」
「もう、佐藤さんの方が可愛いよ!」
「僕、こう見えて結構エロイことばっかり考えてますけど、絶対大事にするから。」
「最初のは余計!よろしくお願いいたします。」
「うげえええ可愛い。」
「もう、バカね。」
二人はそっと手をつないで、水族館を出た。
外はもう夕暮れ時で、手を離さなくても恥ずかしくなかった。
部屋で二人になっても佐藤は変わらず優しく暖かい。
「うーん、僕の方が緊張してる。ごめんなさい。」
「ううん、嬉しい。」
カナは、夫が亡くなって以来、初めて男に抱かれる。緊張や罪悪感や、いろんな思いがあったけれど、もう1度誰かを好きになってもいいのかもしれない。そんな思いを持てるくらい、佐藤は誠実だったし、何より毎日通ってくれているけなげさが、カナの心を解きほぐした。
「カナさん、すごく綺麗だよ。」
「わぁ、そういうこと言っちゃうんだね。」
「言っちゃうよ、綺麗だもん。」
「なんだかすごく恥ずかしいね。しらふだし。」
「うん。カナさん、大好きだよ。」
気恥ずかしさも、切なさも、緊張も、全部の時間が長くゆっくりと廻り、信じられないほどの幸福感の中、ごく当たり前に二人は重なり合った。
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