第3話

日曜日も相変らずオサムとシュウは一緒だった。オサムの部屋で、ギターを弾いたり、漫画を読んだりしながら、ただ一緒に過ごす。

「なあ、オサム。」

「んん?何?」

「お前さ、女とキスしたことある?」

「え!・・・ねえよ。」

「そっか。そうだよな。」

「え・・・シュウは、あんの?」

「・・・。」

「あんのか~!!」

「いやさ、俺さ、去年卒業したチヨコ先輩っていたろ?あの人に少し前に呼び出されてさ、なんかすんごい積極的で。学校いた時から好きだのなんだの言われてたんだけどさ。」

「・・・へええ。」

「んで、部屋においでよって。家誰もいないからって。」

「・・・・え、お前、まさかそれって・・・」

「うん。」

「キス・・・だけじゃなく?」

「ん、まあ、そゆこと。」


なんてことだ。シュウは、大人っぽいと思っていたけど、もう俺よりはるかに大人だったのか。オサムはごくりと唾を飲んだ。

「で、どうだった?」

「何が?」

「何がとか訊くなよ。その、全部だよ。」

「うーん・・・女って、こんな感じなのかと思った。」

「こんな感じってどんな感じだよ。」

「いや、たいした感動もないというか。で、その後、なんだかチヨコ先輩ともう会いたくなくなっちゃってさ。今携帯ブロックしてんの。」

「ええ!?何?シュウ、鬼畜キャラ?」

「何でだよ。いや、なんか、急にベタベタしてくるのが嫌でさ。向こうは慣れてる感じだったし、平気なんじゃないかな。」

嘘だろ、こいつ冷たすぎないか。チヨコ先輩って、ちょっと派手だけど可愛かったよなぁ。シュウ、なんてもったいないことを。

「女ってさ、男ができたら、急に態度変えたり、今まで大事にしてたのを平気で捨てたりするじゃん。そういうのが俺はなんかやなんだよ。」

そう言ったシュウは、やけに寂しそうに見えた。

「俺はまったくわかんねえや。」

「童貞だから?」

「ストレートだなお前。俺たちの年じゃまだ童貞の方が多いよ!つーか、俺なんかお前にムカついてきた。」

「なんで?」

「シュウ冷たすぎるよ。チヨコ先輩はシュウのこと好きだからそうしたんだろ。」

「そうか?好きじゃなくてもそういうことする女もいるだろ。」

「いや、そもそもチヨコ先輩のこと好きじゃないならなんでそんなことすんだよ。俺は好きな女の子とだけ・・・したい。」

「オサム、お前は全部正しいよ。俺も本当はそう思う。ごめん、そろそろ帰るわ。」

「え?飯食っていかねえの?」

「今日はいいや。」

「シュウ、もしかして気分悪くした?」

シュウはニヤリとして振り替える。

「してねえよ。愛してるよ。」

「バカかお前!」

「はは、また明日学校でな。」

「おう。」

シュウは玄関のドアを閉めようとしてはまた開けて、ゴリラみたいな変顔で登場することを3回繰り返した後、最後は最高のイケメン顔で帰っていった。

そりゃあこいつ、モテるはずだよな。

でも、今日のシュウは何か変だったな。あいつ、何か悩んでるのかな。

考えたら、俺はシュウのことさほどよく知らないのかもしれない。

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