第2話
母ちゃん、今日はこの前より遅いな。
あいつ、本当に男とデートだったりして。
オサムは携帯をいじる。電話の履歴が「シュウ」だらけだ。
シュウも俺も一人っ子で、しかも名前が同じ漢字だ。あいつとは特別な縁を感じる。
あいつが転校してきた時は、女子がやたらキャーキャー騒いでたよな。いや、今もあいつといると女子がたくさん寄ってくる。しかも俺たちを「修」が二人で「シュウシュウコンビ」なんて言ってるやつもいたな。
つーか、シュウシュウって、そこ、俺いねえじゃねえか。シュウ二人じゃねえか。
オサムは自然とシュウにメッセージしていた。
「シュウ、起きてる?」
「おん」
「母ちゃんまだ帰らねえ」
「やっぱ男だな」
「まーじキモいわ」
「そお?カナさんまだ若いし普通だろ」
「いや、母ちゃんのそういうの考えたくないわ」
「やいてんな、オサム」
「ねえわ」
「あるです」
「やめろって」
「笑」
「まあ、少し心配」
「じゃあ外見張ってろよ」
「何で?」
「男なら、送ってくるんじゃね?」
「うわ、やだなそれ」
「俺もう寝るから。今日のマラソン練習マジ効いたわ、また明日な」
「おん」
なんとなくアパートの外に出てみた。ホントにあいつ男から送られてきたりして。
その時、車のライトがこっちに向かってきた。オサムは思わず入口の陰に隠れる。
タクシーから、カナが降りてきた。
そしてもう一人・・・げ!本当に男じゃん。
男が、タクシーから一度降りて、カナを抱きしめた。
おおい!何すんだよ!てめえ!
男はすぐに離れ、タクシーで去っていく。
オサムは心臓の鼓動が止まらない。
その時のカナの顔は、オサムが初めて見る、いつもの母ちゃんじゃない顔だった。
マジかよ。なんだあのオッサン・・・母ちゃんをたぶらかしやがって。許さねえ。
翌日、オサムはシュウに昨夜の話をした。
「ほらやっぱ男だったじゃん。」
「いや、騙されてるのかもしれん。不倫とか。」
「カナさんはそんなバカじゃないだろ。」
「でも、父ちゃんが死んでからまだ3年だぞ。」
「まだって・・・3年もカナさん1人で頑張ってきたんだし、彼氏くらいできてもいいじゃんか。」
「シュウは、大人だな。」
「んなことないわ。ただ、親が我慢してるの見るより、幸せな方がいいんじゃねえかなって。」
「母ちゃんが、俺と二人でいるのは我慢してるってことかよ?」
「んなこと言ってねえだろ、からむなよ。」
「・・・ごめん。なあ、帰りアックいかね?あと靴買いたいんだけど。」
「いいけど。あ、アックは俺が奢るな。」
放課後、オサムとシュウが並んで歩いていると、下級生の女の子たちがキャアキャアと騒いでいた。「見て!シュウシュウコンビだ!」「かっこいいー!」
いやだから、それコンビなのに俺いねえから。
「カナさん、今度、日曜日に会えないかな。昼間に。いつも夜食事だけだったから。映画とか、買い物とか。僕、カナさんとできるだけ長く一緒にいたいので・・・」
佐藤は弁当のお金を払いながらやたら大きな声で誘う。どうも緊張すると逆に声が大きくなるらしい。
「佐藤さん、そういうのは携帯に・・・ほかのお客様が。」
おかずを選んでいた中年の女性たちがニヤニヤとしながら佐藤を見ている。
「ああ、すみません!連絡します。」顔を赤らめて、佐藤は慌てて去ろうとした。
「佐藤さん、お弁当忘れてる!」
「あ、あああ!すみません!」
カナも、思わず笑っていた。
そっか、とりあえず、日曜日デートしてみるか。
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