第3話 スリーピン・リンゴは間違ってるわ。リンゴは日本語だから、アップルよ?

 朝は、カナがやってきてほっぺにチューして起こしてくれる。ぼくもお礼にほっぺにチューする。

「カズキはお寝坊さんだから、毎朝手がかかって困るわ?」

「ぼくはカナが起こしてくれないと起きられないんだ。シンデレラだから」

「それをいうなら白雪姫よ」

「あれ、そうだっけ。シンデレラはなんだっけ」

「シンデレラはガラスの靴でしょう?」

「そうだった。白雪姫が毒リンゴで死んじゃうんだった」

「え?死んじゃうの?」

「あれ?死んじゃうよね。毒リンゴだから」

「眠るだけよ」

「そうなんだ。じゃあ、睡眠リンゴだ。スリーピン・リンゴ」

「スリーピン・リンゴ」

 カナは先に部屋をでていってしまう。むなしい。娘に置いて行かれるというだけで、心がむなしさでいっぱいになってしまう。心のよりどころがかけってやってきた。

「カズキ!白雪姫は死んじゃったわ」

「やっぱり死んじゃうか」

「ちなみに、スリーピン・リンゴは間違ってるわ。リンゴは日本語だから、アップルよ?」

「そ、そうだね。アップルだ」

「基本よ。おぼえておいて」

「はい、すみません」

 ぼくは朝から娘にやりこめられてしまった。カナがぼくに抱きついてくる。抱っこしてダイニングへ向かう。

「おはよう、祥子」

「あら、カズキ生きてた?」

「ぼくはカナのキスのおかげで生きかえったんだ」

「リンゴとアップルを間違えたショックで首を吊って、また死んじゃうかと思った」

「ひどい」

 祥子とチュッとキスをする。カナがほっぺにまたキスした。ぼくはお返しに、カナのほっぺをペロリとなめた。

「うえっ、気持ち悪い」

 手でごしごし拭かれてしまった。自分でもパジャマの袖で拭いてやる。

「ごめんごめん。かわいかったから、つい」

 玄関の呼び鈴がなって、ドアがガチャッと開く音がした。カナがぼくの腕から床におりてかけだす。ぼくは洗面所で顔を洗ってうがいをした。ダイニングがにぎやかだ。

「おはようございます、沙希さん」

「奥田くん、おはよう。おかえりなさい」

「そうでした、ただいま。イチゴちゃんも、おはようございます」

「おはよう、カズキ」

 イチゴちゃんがスカートをつまんで広げる。なんかヨーロッパの貴族っぽい挨拶をされた。ヨーロッパの貴族に知り合いはいないけど。イチゴちゃんは沙希さんの娘さんだ。

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