第5話ぼくと君の、嘘と恋心

 ぼくは今まで嘘をついていた。俺なんて普段言わない。君が自分のことを僕というから、紛らわしくてオレオレ言ってきた。心の中で。


 正直に言おう、ぼくは声がコンプレックスだ。低くて暗くて。君が好きだと言ってくれたことに驚いた。この声が嫌いで、誰とも話さないでいたらクラスで孤立した。君は今はない長い前髪とそのボクっ子と、不思議なキャラでクラスから浮いていた。だから前から知っていた。それだけだった。


 ある日新刊を買いに行ったら、君が前髪をあげていらっしゃいませって言ったんだ。かわいい声と笑顔だった。思わず名前を呼んだ、さぞかしキモいと思われたに違いない。君は一瞬固まったし。次の日君から告白されたときは本当に罰ゲームだと思った。


 だけどそれは本当で、君はぼくをいろんなところへ連れ出した。どこでも君はぼくのことを振り回した。君のことよく知らないといったけど、本当に何も知らなかったんだなあと思った。好きになる一方で、君はぼくのことを知っていくたびに嫌いになっているんだろうと何度思ったかわからない。だけど君はぼくをすきだと言う。ぼくはそれを信じられずに、君を何度傷つけただろう。こんなぼくがこんなことを言う資格がないことは知っている。だけど、



「好きだ」


「ほんとう?」


「ほんと、また一緒にお弁当食べないか?」


「僕の側の居心地はどう?」



 意地悪な微笑み。こんなぼくに向けられているのがやっぱり信じられない。



「最高だよ」

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きみの嘘、僕の恋心 新吉 @bottiti

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