第4話きみの言う、僕の小声
きみのいうことは
だいたいが聞き取れない
いつだかお前はそう俺に言った。俺の声が小さくて話が聞こえないと。お前もはじめはそうだったろうが、俺と話しているうちにどんどん声が大きくなった。遠慮がちな声はどうしたんだと言い返した。
「そうだったか?」
「そうだったよ」
きみのおかげで変われたんだろう。嬉しい。そういってはにかんだ。僕はきみにお礼をしなきゃいけない。そう何度も言われた。人を好きになって、側でくだらない話をするのが、こんなに楽しいと思わなかったと。
「きみはつまらないだろうけど」
「そんな、ことはない」
「楽しい?」
「まあまあだな」
「ふふ」
微笑みがかわいい、そんなことは口が裂けても言わない。するとお前の小さな声が聞こえた。
「かわいい」
「俺は可愛くない!」
「わ、おっきな声出さないでよ」
「わけわかんないこと言うからだろ」
かわいいのはお前の方だ、と心の中で叫んだ。
俺はお前のことが嫌いだったし好きだった。いつも気になっていた。嫌いだと言ったのは別に前髪を切ったり、メイクしたり、友だちができたからじゃない。
お前が他の誰かを好きになる前に、
誰かがお前を好きになる前に、
嫌いにならないときっと耐えられない
お前が俺をすきじゃなくて、
側から消えるのを想像するとたまらない
次の日俺はお前に嫌いと言い放った。
前髪を切れといったのも傷つけたのも俺なのに、
前髪が短いからお前の傷ついた顔が
はっきり見えるから
たまらなくなった
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