第3話きみの嘘、僕の恋心

 嘘だといってよ



 俺はなぜ自分のことを僕と呼ぶのか聞いた。



「好きな小説のキャラクターが自分のことを僕っていうんだ、その子も女の子で僕みたいにすきな人がいるんだよ」


「そいつはどんなやつなんだ」


「自分のこと普通だっていってるけど普通じゃない。まあ小説のキャラクターだしね」


「そのお前と同じボクっ子はなぜその男が好きなんだ?」


「なんだかんだ言うけど、結局強いし優しいからかな」


「そう」



 お前は俺がどれだけ冷たくしても効果がなかった。無視してすれ違ったりした。前髪を切ったら好きになると嘘をついたら本当に切ってきた。



「どうかな?」


「いや、あんまりよくないな」


「そう、そうか」



 お前はいつのまにかできた女友達とメイクをしてさらに可愛くなっていった。男はお前の綺麗な目や笑顔に気づき始めた。あんまりよくない。お前の側はどんどん居心地が悪くなった。


 結論。俺はお前を振った。

 いつものやり取り中に


「きみは僕のこと嫌い?」


「嫌いだ」


「え、嘘、ねえ嘘でしょ?」


「嘘じゃない」


「…そうなの」



 お前はそうして隣からいなくなった。

 俺は強くて優しい男になれなかった。

 俺はお前の恋心に気づいて、逃げて、逃げられなくて、まんまと恋をした。

 だけどそれに気づかれてはいけない。

 俺は嘘をついた。冷たくいった。


 お前は言った。


 嘘だといってよ



 こういうときは心が冷たくなるんだと思っていた。

 なぜだかあつくて、冬じゃないみたいだった。

 ただただ暖房のせいだった。

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