side: BLACK 5話 食人鬼

市街地において憩いの場である、中央公園。

野良猫しかいないはずの深夜、一人少女は灯りの下に佇む。

御堂亜理紗。

手にはスマホを握りしめている。

そして、亜理紗の姿がよく見え、尚且つ外灯の明かりが届かない範囲内の樹木に夏目蘇芳は身を潜めていた。

『たいした度胸じゃねえか』

ウルは感心しきった声を漏らす。

彼の声は主たる青年の耳にしか聞こえない。

二人だけで会話する場合、蘇芳は携帯端末以外の方法で意思疎通を取れるのだ。

彼の故郷で用いられる技術のおかげである。

『母親会いたさに体も命も張るとはよ。褒めてやってもいいんじゃねえのか?』

「あえて危険を犯すなど、度胸以前に頭の問題だろう」

それに、と蘇芳はその先を続けなかった。

ウルにも分かっているのだろう。

母のいない寂しさと悲しみ。

再びあい見える殺人者の恐怖と不安。

当初の予定では、さっさと亜理紗を家に帰し、一人にさせたところで現れる異形の人喰いを密かに処理するはずだった。

そして忌まわしい記憶を消す。

地球の民間人が異星人の存在を知ってはならない。

記録にも記憶にも残してはならない。

だというのに、

『御堂、か。まさかンな所で』

「来るぞ」

鋭く短い一言に姿なき人工知能AIの声は途切れた。

下に着込んだナイロンのつなぎから黒いフェイクレザーの手袋がのぞく。

両手にはめると、蘇芳は暗色のコートに繋がったフードを目深に被り、目を凝らして外灯に佇むを睨んだ。



二人。

数は一人増えている。



長い黒髪を夜風になびかせる少女。

対するは、人の良さそうな顔をした若い男性。

白いシャツの襟元は薄汚れていた。黒ずんだ飛沫の跡により。

「やあ、そんなとこにいたのか」

初めて会った時と変わらない様子で鈴木建弘のカタチが口を開く。

亜理紗は黙ったままだ。

ずっとスマホを握りしめている。

「一人?」

鈴木の頭が大きくなっていく。

距離が狭まっていくからだ。

口からのぞく歯はゆっくり近づいていく。

それでも亜理紗は動かない。

後ずさりせず、立ち尽くしたままだ。

(まだダメ)

蘇芳に言われたとおりにした。

けっして、持ち場を離れないこと。

「そういえば」

ふと、探偵のフリをしていた男は視線をずらした。

「あの人…あの家に入ってきた人。彼は今どこにいるの?」

亜理紗は首を傾げる。

いっさい、喋らずに。

落ち着いて会話ができるほど自分が器用だと思っていなかった。

勇敢だと思っていなかった。

「いや、別にいいんだ。知らないなら。腕、あんなことになったのも怒ってない。なにしろ」

鈴木の肩が動いた時、亜理紗の靴底が地面に擦れた。

あと一歩、というところで後ろに退きそうになったのだ。

肩をすくめる仕草で鈴木は

「ほら。あんな行為、僕にとって何の意味もないし」

切り落とされたはずの腕は確かにそこにあった。




四肢の再生。

結合ではなく、切断面から細胞修復。

ウルは推測する。

『そして捕食行動。亜理紗の話じゃ歯がやけに多くて冷たい飲み物が好きときた…カリビアン星系の食人鬼か。あの辺はラナイの植民地だったな。軍事政権から解放されて、好き勝手始めたって聞いてたが、まさか地球に…』

「見ろ」

視線の先、亜理紗はスマホを操作していた。

画面を見なくても、表面上の位置や押した回数でどの項目を選んだのか特定できる。

パソコンのキーボードのように。




「腕ぐらいすぐ治るさ」

そう言って鈴木…異星の食人鬼は手を下ろした。

「ただ、どうやってやったのか知りたくてさ。僕の勘が正しいければ彼は」

食人鬼は再び歩き出す。

「夏目蘇芳。違うかな?」

どうやら向こうも蘇芳のことを知っているようだ。

なるべく亜理紗は無表情を維持した。

「僕らの世界…宇宙とでも言うべきかな。有名人でさ。なのに噂で…だから確かめたくて事務所に似た人がいるって聞いて足を運んだ。なにかと不都合でさ。近くにいられると…」

あと一歩。

最早、距離と呼べない間隔。

亜理紗はいつでも用意ができていた。

「なにしろ」

『やれ』




画面を流れるメッセージ。

亜理紗の指がなぞる。

直後。

「ァァアアアアアッ!!」

食人鬼は身をのけぞった。

耳や頭を抑え、今にも髪の毛や皮膚を引きちぎりそうに。

その姿は空き家で哄笑した様に近い。

だが、亜理紗には恐怖する暇は与えられなかった。

次にとった行動。

それは、

『行け』

亜理紗は背を向け、全速力で公園の出入り口を目指した。

その際、スマホは地面に置いた。

明日、あらためて蘇芳の事務所に来いと伝えた。

スマホはその時に返すと。

『その頃までには母親のことも調べておく』

そう約束した。

亜理紗は信じることにした。

必ず母に会える。

そのために蘇芳に協力した。

まずは生き延びるのだ。

(絶対死なない。お母さんのことも死なせない)






「ハア…ハア…こノッ!」

足元から届く不快な超音波。

その発生源を粉砕せんと異星の食人鬼は靴底を上げた。

しかしそれは叶わなかった。

闇を切る鋭い切っ先が振り上げられたのだ。

忌々しそうに、彼はバックステップで回避しながらスマホから離れた。

「放っておいても死にはしまい」

襲撃者はスマホを拾い上げると、胸元にしまった。

片手は異形の男を牽制すべく、前に突き出したままだ。

そしてその手から、より正確には手の甲だが、宵闇から生まれたような刃が伸びている。

辺りに黒い煤を撒き散らしながら。

「殺す前に聞いておく。あの娘の母親を知っているか?」

「ハア…ハア…ハ…ハハ…」

荒い息遣いの中で食人鬼は嗤う。

「外れか」

「ハハ…ハ…知っていて…教えるとでも…思ったか…」

温和な口調はなりを潜めている。

そして変化は他にあった。

蘇芳が空き家で切断したはずの腕。

その指先が透けるように粘性を帯びていく。

溶けるようにだらりと地面に垂れ下がると、徐々に辺りに広がり始めた。

たちまち食人鬼の足元に肌色のプールが出来上がった。

自らの一部を本体に戻したのだ。

食人鬼は口の端を歪めた。

そして無傷の腕を宙に上げ、

『来るぞ!』

蘇芳が跳躍した直後。

粘性のプールから同じ質感の長い形状が飛び出した。

それは立っていた足場に突き刺さると、たちまち腐臭の漂う煙が上がる。生えていた微かな雑草もまた煙を上げ、たちまち縮むように枯れていった。

(消化液の分泌か)

「女の子は丸呑みしやすいが、男は口に入りきれなくてね。ほら、体格や骨格の関係もあるし」

『で、溶かして食べやすくする、と。悪趣味な蛮族とは聞いてたが、ようく分かったぜ』

「それほどでも」

『褒めてねえよ』

ウルの声が聞こえたのか、照れたようにニッコリ微笑む異星の食人鬼。

「せいぜい頑張ってくれよ」

言うが早いか、ゼリー状の消化液は解き放たれた。

無数の触手に姿を変え、標的蘇芳めがけて。




だが、蘇芳は眉一つ動かさない。

消化液の間を縫うように走り、ときには後退、ときには跳躍。

触手の根本の位置と角度で軌道を予測、的を外れた先端を手甲の仕込み刀で切断する。

ときには膝で払って軌道をずらす。

その際、膝から黒い煤が散っていた。

カリビアンの食人鬼はその一部始終を見物しながら、やがて首を傾げる。

(妙だな。金属にも影響はあるはずなんだが)

当然だ。

ゆえに、蘇芳は触手で切断しながら目には見えない速さで腐食した刃を修復していた。

物であるがゆえ、彼の武器もまた破壊は避けられない。

ゆえに、修復する。

蘇芳自身の体から放つ、黒い煤によって。

むしろ彼にとって、黒い煤そのものが武器と言うべきか。

『いいぞ、そのまま追い詰めろ』

言われるまでもなかった。

食人鬼との距離はみるみるうちに縮まっていく。

温和な顔を貼り付けていた異星人の顔が歪む。

探偵事務所の前に隠れた時以来だ。

迫りくる黒い死の具現はついに、



(捕らえた)

袖から伸びる黒い刃は異形の腹に深々と突き立てられた。

食人鬼は目と口を見開いた。

声はなかった。

ただ、大きく開け放たれた

蘇芳の目も見開かれた。

違和感がある。

手応えはない。

これは、

『擬似餌だ!』

ウルの言葉より早かった。

消化液のプールが波打つ。

同時に鈴木建弘の輪郭も歪んだ。

顔から表情が、頭から顔すら消えていき、指の付け根から肩の凹凸さえぼやけていき、全身が不定形に広がる。

並行して、蘇芳の胴体や四肢にはゼリー状の触手が巻きついていた。

蘇芳は動かない。

無理に動かそうとすれば、関節を外しかねない力が込められる。

唯一の救いは、コートに備わった腐食耐性だろう。

かろうじて、消化は免れている。

(爪ガ甘かッたナ、異形殺シ)

鈴木の姿はない。

しかし頭に響く声の源を特定できた。

首を動かさない蘇芳は足元に視線だけ走らせる。

消化液の水溜まり。

ゼリー状の質感を持つプールだったモノ。

それも今は次第に形を変え始める。

丸みを帯びた円盤状から伸びる太いホース状。

先端から細い二本角が曲がったように垂れ下がる。

それは人間体の時腕だったもの…実際は触覚である。

(夏目蘇芳…噂ハ本当ノよウだッたナ。我々ノよウに人間カら恩恵ヲ授カる者ヲ容赦ナく殺戮シてイく異星人がイる、ト。シかシ、実際ハどウだ? マだ青二才デはナいカ)

ぶるぶると円盤状の体を包み隠す胃液の塊は揺れた。

それがラナイ星系に位置する惑星カリビアンの知的生命体の一種、食人蝸牛マイマイである。

(コれデ逃ゲらレなイだロう)

万力を込めて締め上げられるか。

触手から高濃度の消化液が分泌されて溶かされるか。

どちらかしかない。



蘇芳の顔に苦悶の表情はない。

身動きもない。

(ドうシたノかネ? 恐怖デ頭ノ中ガ真ッ白トみタ)

「違うな」

蘇芳はため息をつく。

どこか、呆れた調子だった。

不審がるマイマイ種が尋ねるより先、

『そりゃそうだぜ。これで心置きなくテメエをぶちのめせるんだからよお』

耳をつんざく不快な嘲笑。

蘇芳の相方の声だった。

だがそれよりも、余裕なセリフが引っかかった。

(ナにヲ言ッて…?)

捕らえた触手が小刻みに震えだす。

チリ、と焼けつく痛みを感じて。

微かに降り注ぐ黒い煤。

捕食されるべき標的の周囲を舞う。

食人蝸牛カタツムリは理解した。

次に起こり得る出来事に危険を感じ、異形殺しから離れようとした。

遅い、と呟く声。

それは低くくぐもって響く。






そして、夏目蘇芳の姿は消えた。

黒い煤を撒き散らして。

機械仕掛けの鎧だけがその場に残る。



(馬鹿ナ…)

異星の異形は鈍重な姿に似つかわしくなく、大きく跳躍して間合いを取る。

そして、機械の人型を凝視する。

地球に伝わる西洋の騎士甲冑とも、日本の武者鎧にも酷似した装甲。

鈍い黒光りの中、赤い筋が血管めいて脈打ち、ヘルメットの目元を覆ったマスクはまさに騎士そのもの。

だが、実際騎士にあらず。

(偽神、ダと?)

「機神だ」

ヘルメットから流れる囁きに乗じて、実体なきAIがからからと嗤う。

『遠い宇宙のお偉方が、テメーらみてえな害獣を駆除するのに作った歩く兵器、異形殺しの機神マキナだ』

もっとも、とウルは愉快そうに、

『実際作ったのはこいつだがなあ』

作った、と呆然ととした声の主はヘルメットに隠された顔を見る。

身に纏った機械鎧…機神マキナを通した装着者パイロットの顔は窺い知れない。

しかし、その顔には笑みが広がっていることだろう。

(作ッた…異形殺シ…機神マキナ…ソうカ、貴様ガ)

「さて…」

機械仕掛けの神は肩と首を回した。

手首と指、足首も。

関節を揉みほぐす様は、パイロットではなく機体そのものに血肉が宿る錯覚に陥らせる。

だが、ウルは知っている。

正体を知った食人鬼も理解している。

機神マキナの駆り手にして異形殺しの異星人、夏目蘇芳に血も涙もないことを。

「…始めるか」

言うが早いか、黒い機械鎧は右手をかざしながら地を蹴った。

黒い煤が周囲に舞う。

それは手首から甲を隠すように集まり、黒い刃が生まれいづる。

(ヤはリ、ソうカ…貴様ガ…)

黒い機神マキナは甲剣を構えながら突き進む。

(創造者にして破壊者…)

ゼリー状の全身が一瞬縮まり、

(ブラックスミス!)



宙に届かんとする無数の帯。

いずれも透けてたなびき、夜空に浮かぶ光の粒が通して映し出される。

その光景を夏目蘇芳…ブラックスミスは美しいと感じる。

触手のいずれからも消化液が分泌され、いかに機神マキナといえど触れれば無傷で済まされないとしても。

『悠長に眺めてる場合か』

分かっている。

ブラックスミスは触手にいっさい触れることなどなかった。

軌道を予測し、到達する地点を離れながら接近する。

次第に失われていく距離。

異星の食人鬼はさらに触手を増やそうとする。

全神経と器官に働きかけ、消化液を増やす。

倒さなくては、殺さなくては。

触手の数は増え、ときに先端が微かに黒い機体を掠めた。

しかし、ブラックスミスは苦痛で動きを鈍らせない。

たとえ感覚を共有していようと、擦り傷程度では通用しないのだ。

殺さなくては、殺さなくては。

いつのまにか、食人鬼は喰らうことを忘れていた。

焦るあまり、力み過ぎて咳き込んだ。

しかも、

『ギャハハハッ! なんだそりゃ!』

失念していた。

夢中で捕らえようと伸ばすうちに、触手同士が絡み合い、もつれたのだ。

ブラックスミスはやろうと思えば手甲の刃で切り落とすこともできた。

触手が消化液を分泌しても、彼のを持ってすれば即修復可能。

だが、あえて攻撃しなかった。

(おのれ! まさかこの時を…)

カリビアンの食人蝸牛カタツムリは逡巡した。

解くにはいったん戻さなくてはならない。

だが、そうすれば。

だが判断に必要な思考の猶予を、異形殺しの執行者は与えない。

りな』

言われずとも。

ここでブラックスミスは初めて刃を振るった。

横殴りに。

下から殴り上げるように。

穿つように、直進ストレートを。

絡んだまま、触手は主たる肉体から切り離されていく。

大木のように倒れ伏す自身の一部から食人蝸牛カタツムリは身をのけぞって回避する。

その間、黒い機械鎧との距離は一メートル未満にまで縮められていた。

そして、

『ほい、終了っと』

黒い煤を吐き出しながら、ブラックスミスの踵はカリビアンの食人鬼を大地に縫いとめていた。

恐れか、怒りか。

触覚の先端にぶら下がる眼球を細めている。

「殺す前に聞いておく」

再度、ブラックスミスは夏目蘇芳の質問を繰り返した。

「あの娘の母親を知らないか?」

(ダ…れガ…キさ、マに…)

そうか、と黒い甲冑は納得したように頷いた。



「…誰なら知っている?」

ピタ、と異形の蝸牛カタツムリは目玉を見開いた。

(…察シてイたカ)

探すと欺きながら、演技にしては自信があった。

だから、カマをかけてみたのだ。

結果、当たりを引いたらしい。

(最後クらイ…いイダろウ)

ブラックスミスは顔を近づけた。

ぽつぽつと呟く異星の蝸牛カタツムリの言葉を聞こうと。

そして、




『蘇芳!』

ゼリー状に亀裂が入り、そこから剥き出した無数の歯茎から粘液が飛ぶ。

それは黒い騎士甲冑の兜にあたるヘルメットにかかった。

「…っ!」

左手で頭を押さえる様を食人鬼は嘲笑する。

(愚カな四ツ足生物ガ! 会エたトこロで、貴様ヲ待ツのは死ノ)



「…だとしも」

頭から離れた左手。

代わりにそれは、異形の頭を掴んで握り締めていた。

「今ここで死ぬのは貴様だ」

食人鬼は気づいた。

ただ単に、頭を鷲掴みにされたのではない。

その手の指には、かの機神マキナの一部が挟み込まれている。

溶けかけたヘルメットの破片。

『ダイヤモンドって八百度で炭化するらしいよな』

ゼリー状の皮膚から分泌される体液。

しかしそれは胃液ではない。

だらだらと流れ、流れた汗から伝わるのは悪寒だ。

『お前さんの力の便利なとこはだな、蘇芳。炉や槌がなくても火を起こして、武器が作れるところだ』

ちなみに、と声だけの存在は嗤う。

『…作る過程利用して、才もあるってところだ』




異星の蝸牛カタツムリの声は届かない。

口から喉や下はたちまち熱でカラカラに干からびていく。

触覚から外殻とそれに保護されていた肉体すら粘性と潤滑性を失った。

唯一、焼け落ちるのが一番遅い箇所…眼球は一部始終を捉えていた。

自身を捕らえる黒い創造者。

その割れた仮面の向こうに映る眼。

熱を帯びたように煌々と燃え、紅く睨んでいた。

異星の異形を殺す、異星の異形殺し。

異形を産んだ、異星の神をも殺す人。

機械仕掛けで偽りの、神殺しの神。

黒き創造の力を持つ破壊者。

(ブラック、スミス)

少女を喰らい損ねた異形が、最後に呟いた言葉だった。





『…どうするよ?』

どうするも何も、と機械の体が黒い煤と共に消えた後、夏目蘇芳は答えた。

焼け焦げて大地に張り付いた異星の軟体生物の死骸を見下ろす。

「採取して復元する」

本来、彼の仕事はこれである。

異形殺しはその過程でしかない。

ゆえに、命を摘み取ることに躊躇などない。

その次のプロセスに移るだけだ。

『オレが言ってるのはそういうことじゃねえよ。嬢ちゃんになんて言うかって話だ』

蘇芳は胸元から取り出したプラスチック状の球体を焦げ跡の上に置く。

たちまちそれは薄いビニルシートのよに広がり、異形の死骸を包み込んだ。

再び球体に収まったそれを拾い上げると、慣れた口ぶりで応えた。

「亜理紗のタブレット宛てにメールを送れ」

本気マジかよ』

もちろんウルなら朝飯前である。

生物と同じく五感全てを感知する人工知能だ。

ゆえに、亜理紗が暗証番号でスマホのロックを解除したことを知っているし、QRコードで登録した際プロフィールからパソコンないしタブレットのアドレスを他に所有していることも把握済みだ。

『返事はどう書く?』

「任せる」

『AI使いの荒いこった…』

蘇芳には他に考えるべきことがあった。

どう動くべきか、を。

あの食人異星人が最期に教えた情報。





(通リ魔ヲ追エ)

(黒イ刃ダ)

(オ前ト同ジ)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



翌日、夕刻。

鍛冶屋探偵事務所に御堂亜理紗は再び現れた。

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