神様は強制送還させました!

「コーン……て、流石は落ちこぼれだな(汗)」


「お前――もしかして……滅茶苦茶弱いのか?」


「ふ……ふにゃあああああぁぁ!?すいませーーーーんっっ!!」


 威圧と供に少女神様アリスの振り抜いた杖は、エセ勇者の展開する障壁の遥か手前――完全な虚空を何かで叩いた様なを響かせる。

 言うに及ばずその部位は、障壁でも最も外側に位置したである。


 響いた音と供に少女神様の威圧が早々と砕け――コケにされたエセ勇者が怒りに打ち震えた。


「こ……ここ、この俺様に舐めた真似をしてくれたなっ無能女!君をただ雷撃で焼くのは足りない……徹底的になぶり、徹底的におとしめ、徹底的に甚振いたぶってやるぞっ!!」


 すでに怒れるエセ勇者は、己が口にしている言葉が勇者にあるまじき物と化している事にすら気付かない。その気付かぬ勢いのまま、少女神様の首根っこを掴み上げようとした――


 刹那――


「悪ぃな……こいつは俺が守るって約束したばかりなんだよ!この汚ねぇ手をどけてもらおうかっ!!」


「なっ!?いつの間――」


 伸ばされた腕を鷲掴むは、救世のエージェントビブリアス。腐った魔手が少女神様へ届くか否かの所で二人の間に割って入っていた。

 その双眸をエセ勇者へと叩き付けながら優しき労りを乗せて、大勝負を勝ち抜いた少女へ賛美を贈る。


「想定外のキャラで戸惑ったが――いいアシストだったぜ?アリス。よくやった!」


「……ビアスさん。は、はいっ!」


「と言う事でだ――形成を逆転させてもらうぜ?エセ勇者とやらよ!」


 賛美もそこそこに掴み上げる腕を介しそれは放たれる。

 、少女神様より授けられた能力をエセ勇者目掛けて――

 

「なん――放せ、貴様!?この俺様が誰だか――」


「受けやがれ!能力重装事象変換スキル・レイヤ・トランスファードっっ!!!」


 そしてまばゆき閃光を撒き散らす光の帯が、その歪んだ性根ごと包み込んだのだ。


「うぎゃああああーーーーっっ!!?」


 が――

 走った閃光は文字通り光を放ったのみの効果で止まっていた。

 そう――……であるが。


「――ああああーーー……ああぁ?何も起きねぇじゃねぇかよ!?クソっ、ただのコケ脅しで俺様が――」


 身を包んだ光が消滅するや、それが無力と察したエセ勇者はすでに冷静さを欠いた状態で……己の腕を未だ鷲掴む男を近接武装――最強の〈勇者ブレード〉で斬り付けようと抜き放った。

 煌く剣閃。だがそれがエージェントを捉えるよりも早く……光学的な光を帯びたナイフを逆手に握った拳が


 勇者が展開していた俺TUEEE能力の持つ無双障壁が、少女神様による付与能力で発動効果に変容を来たしていた。エージェントの弄した策が見事にはまっていたのだ。


「――がぶえっ!?」


「攻撃が……通りましたーーっ!」


 鈍い音と供に地面へと叩き付けられるエセ勇者。

 己の落ちこぼれであったはずの能力が、上位の神の掛けた能力ギフトを超えた瞬間に打ち震える少女神様。

 彼女がエージェントへと付与した「俺TUEEE能力を、勇者側が能力解除したタイマン勝負を許可させる」力の勝利である。


 すかざず地面に仰向けで倒れこんだエセ勇者へ馬乗りになったエージェントが、〈強制転移〉の力が付与された半物質化刃セミマテリアル・ブレードを振りかざして――

 眼前の醜い男の胸元へと突き立てた。


 しかしそれが勇者に傷を与える事も無く、すり抜ける様にただ突き立つ。

 己が状態に気付いた勇者が醜く歪んだ顔で吠えまくる。


「ひぇ、ひぇめえてめえふぉのおりぇひゃまにこの俺様にほんひゃひょひょひへこんなことして――」


「無様だな。何を言ってるのかサッパリだぜ?エセ勇者よ。ああ……後、手向けと言っちゃなんだが教えといてやる――」

「この刃で刺されたからと言って傷を負う事はまず無い。が――?」


ひゃひっなにっ!?」


 能力ギフトを使おうにも上書きされた能力効力が影響して無力な勇者へ、エージェントは勝ち誇り告げる。まさに彼が言葉にした通り……エセ勇者にとっての最後の手向けとなる言葉を――


「お前はこのまま元いた世界へ強制送還される。加えて……――精々あちらで、テメェが犯した罪を償いやがれ!」


「ひょ、ひょんひゃそんな!?ひゃひぇひょヤメローーーーーっっ!!?」


 閃光は勇者のみを覆う烈光となって天へと突き刺さり――エセ勇者はエージェントの目論見どおり、元の世界へと叩き還されたのだった。

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