神様は決断しました!
自らの失敗で転生してしまった私。
そこで出会ったビアスさんと言う、世界を守るための戦いを行う男性。さらにはその私達を問答無用とばかりに襲って来た、雷撃のシグムントを名乗る勇者様。
けれど勇者と名乗る存在を実際目にした私は、自分が描いていた登場人物とはあまりにもかけ離れた姿を目撃してしまい——それを私達〈ウンエイン界〉の同族が生み出してしまった事実に、言いようの無い絶望感を抱いてしまったのです。
同時に――
〈ウンエイン界〉の神様連中にとって物語とは、業績と言う数字と目に見える売り上げ高を生むためだけのモノ。そんな中で、自分もその
ビアスさん達を初め、ここに住まう人々にとって〈エンディア〉は唯一の安息の場所であり故郷。それが今滅びに向かっているなどと言う状況を、私達の業績のために受け容れろなんて——私はまかり間違っても口になど出来ませんでした。
そのかわり——私の心には、今まで想像だにしない思いが湧き上がって来たのです。
「ビアスさん!私……あなたの力になりたい。」
「はあっ!?つかさっきお前さん、戦う力が無いとか——」
私は戦うための
いませんが……こんな世界を目の当たりにして——物語を生み出す者として、放ってなど置けなかったんです。
「それでも!……それでもこんな世界を生み出したのは、私達の同族。だからこそ責任の一端は、この私にだってあると思うんです。」
「正直何ができるか分からないけれど——あんな無法者……のさばらせては行けないと!」
勢いに乗せて放った言葉。ですがもう口にした以上は引き下がる訳には行きません。
その思いで……眼前の〈エンディア〉を救わんと死力を尽くすビアスさんを見つめます。
すると根負けした彼が嘆息のまま頭を掻き——
「はぁ……どうやら本気の様だな。しかしアリスができる事と言えば限られる。さてどうした物か……。」
視線を泳がせながら、私を含めた勇者様討伐の案を思考し始めました。
私も熱くなって気付くのが遅れましたが……思いっきり見つめてしまった自分が恥ずかしくなり——後になって顔を火照らせ
そんなこんなで僅かの沈黙。私をチラリと見たビアスさんがふと質問を投げかけて来たのです。
「アリス。君の能力である因果操作は、奴らにかける事は出来ない様だが……俺にかける事は可能なのか?」
「ビアスさんに?ですか?……その——あなたが現地の人である事も踏まえて、あの勇者の様に上層の神様の力が関与していないのが前提とはなりますが――」
「でもでも……俺TUEEE能力やチート能力を超える様な能力は、授ける私が落ちこぼれなため不可能だとは思いますが——」
自分で落ちこぼれとのたまう私は言いようのない虚しさが浮かびましたが……そこまで口にした私へビアスさんが口角を上げたしたり顔を返して来ました。
「いや、奴らを超える能力を得る必要はない。今までの戦いの中で、その
「だから俺が求めるのは奴らの能力を認める方向……奴らが真に俺TUEEEやチートである事を条件に発動できる能力だ。」
そして語られる言葉に、私は疑問符を浮かべるばかり。その私へ耳打ちする様に顔を寄せたビアスさんからさらなる作戦の概要が放たれる事となるのです。
「その能力を起点とし、もし奴らの能力が偽りであればそれなりの弱点を突いて圧倒。逆に俺TUEEEが確定であれば……それを条件付に発動する能力で対等へと持ち込む——」
「あちらの能力を打ち消すのではない……活かした上で、エセ勇者の能力そのものに細工しこちらの有利な条件へ引き摺り込む様仕向けるって訳だ。」
想定なんて遥か彼方の策が飛び……
それはビアスさんへ、あちらの能力が想像通りの物である事を条件に発動する力を授け——ビアスさんの得意な戦い方を、あの勇者の能力でこっそり展開させると言う物だったのです。
それから少しの間……眼前の男性の底知れぬ可能性に、羨望の眼差しを送っていた私がそこにいたのでした。
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