神様はトキメキました!
襲う雷撃は幾重にも折り重なり、
だがエージェントもその手に
走り抜けた後には無数の穿たれたクレーターが刻まれ、勇者を名乗る男シグムントが俺TUEEEの無双力をまざまざと見せ付けていた。
「ははっ!良いね、良いね!俺様の雷撃で踊って見せてくれよ、異物共!」
「くそっ……どっちが異物だ!好き勝手やりやがって!」
「はわわわわわっ!?」
それでも逃走を図るエージェントは、寸での所で雷撃を交わし……且つ少女神様を守る様に立ち回る。が、エセ勇者の言い放つ通り——
当の手を引かれた少女神様は目を回しながらも追い縋っていた。
しかし——異物と称した者たちを追い回すエセ勇者だったが……視線の先に捉えた七色の光の壁を見るや眉根を寄せて吐き棄てる。
「ちっ……〈異区画境界線〉か。あそこに逃げ込まれちゃ俺様でも手出しできねぇ。」
エセ勇者が言葉を吐いたのと時を同じく、エージェントと少女神様がするりと光の壁
「まあいい。どの道手は出せずとも、奴らの行き場もないわけだからな。これからじっくり
「精々無駄な逃避行でも楽しんでやがれ、異物共が。」
荒れ狂う雷撃を嘘の様に沈静化させたエセ勇者。悪態のまま
されどその眼光はこれからいつまで異物と称した二人を
激しかった地を割く爆轟が収まった頃――
エージェントは神様少女の頭を抱く様に身を
そこはエセ勇者が〈異区画境界線〉と呼んだものに相当する場所である。
未だ警戒の目を岩場影より外へと飛ばすエージェント。それに対し……神様少女はバクンバクンと心臓を鳴らしながら、あり得ぬ己の状況を理解するのに必死であった。
「あ、ああああのっ!?ビアスさん、わた……私まだこういうのは――」
パニくる少女は今まさにエージェントに抱かれた状態。男性経験など欠片も存在せぬ少女にとっては
「……どうやら
「っと!?わ、悪りぃっ!……いや、ワザとじゃないんだ。」
「はい……その、大丈夫なのです。ちょっとびっくりしただけで……。」
不可抗力ではあるが、結果的に神様少女を抱きとめた形のエージェントも慌てて距離を取る。そうして青年と離れた神様少女だが——鳴り止まぬ心臓の音と共に、得難き経験の中で困惑ながらも僅かに寂しさを浮かべていた。
どちらとなく気まずい雰囲気で言葉が途切れた、追い詰められているはずの二人。と、言いようの無い空気に耐え切れなくなったエージェントが口火を切った。
「あー、さっきオレが境界が……って言ったよなアリス。」
「は、はひっ!?た、たしかそんにゃ事——!?」
そして未だ鳴り止まぬ心臓が、神様少女の舌を絡ませてしまう。
「ぷっ……くくくっ!」
「ふにゃあああぁぁ!?噛んだーーーっ!?」
噛み噛みな神様に吹き出すエージェント。
己が失態でパニックになる神様少女。
けれどその和気藹々は本人らも知らぬ内に、二人の距離を近づける事となる。
同時に
「境界……異区画境界線てのは、この世界本来の大地と奴らの自己中結界が生む境界だ。言わば奴らの力に抗う世界のせめてもの抵抗——」
「この区画の僅かな隙間一帯が、唯一奴らの攻撃を遮る障壁となっている。本来の世界には戻れないが、そこからの加護が俺達を守ってくれている訳だ。」
「元の世界の、せめてもの抵抗……ですか。」
語られたのは、滅びゆく世界に僅かに残る正常なる物理事象。
世界を憂うエージェントの言葉は、世界が元に戻りたいと願っていると言う事実を……図らずとも神様少女の心へと伝播させる事となったのだ。
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