神様は反骨しました!
本来人類へ異世界転生を促し、上層界〈ウンエイン〉の業績を上げる使命を課せられし冴えない
「……そんな、世界が崩壊しかけてるだなんて!?でもでも、地上界の現代社会ではそれはもう異世界ファンタジーと言うだけで爆発する人気に――それに乗じた様な売り上げが年がら年中記録されてるんですよ!?」
「地上界とか現代とか、一体どこの話をしてるんだよ(汗)オレにとってはこの世界線が故郷であり、生まれた場所だ。それにオレが言った事は真実であり――」
「元はと言えば、あんたら神様がその現代とやらから無秩序に異邦者を転生させまくった結果がこの事態だ。まあ今さらそれを言いあった所で無駄なんだがな。」
「はぅ……その点については申し開きもない訳で——」
エージェントより語られる言葉が、目にした惨状で噓偽りではないと察し……そしてそれを招いたのが己が住まう天界の仕業と指摘され——
すでに少女神様は反論する意思すらも奪われてしまう。
「……あんたは間違いなく下っ端だな?だったらあんたにそれを愚痴った所で、事態が好転する訳でもないだろう。その……悪かったよ。」
視界に映る誤転生神様を、改めて見定めたエージェントは僅かに頬を紅潮させて視線を逸らし謝罪を送る。
彼は今の今までの転生者への遺恨を宿した目で少女を見ていた。それが冷静を取り戻すや現在の彼女を形取る金色の御髪舞う可憐さを認識してしまい……言いようの無い気まずさに包まれたのだ。
そして少しの沈黙を経て、エージェントは手にしたナイフをしまい立ち上がる。
彼が本来行わねばならぬ任へと戻るために。
「ここで時間を潰してる暇は無い。オレはこれから奴ら不貞の輩共を、なんとしてもこの世界から排除せねばならないからな。悪いがオレは——」
「あのっ——」
立ち上がったエージェントへ向け、
「あまり時間はないんだが……何だ?」
「私も……私にもあなたのお手伝いをさせて貰えないでしょうか!?」
「……前代未聞だな。転生して来た者から転生者排除協力の申し出を受けるなんて。なら聞くが、あんたは何らかの戦う力は持ち合わせているのか?」
「ありません!——いたぁ!?」
何が語られるのかと聞く体制であったエージェント。
そこへまさかの不貞の輩排除への協力の声。が……続けて戦う力を持ち得るかと問えば、問題外の即答が強襲した。
青筋がプチリと音を立てた様に、エージェントの無言のチョップが少女神様の頭部へ直撃する。
「聞いたオレがバカだったよ。つうかバカにしてんのか?ただでさえ俺TUEEE勇者にチート魔王の対応に頭を悩ませて——」
「でもでも私——戦う力ではないけれど、特定の対象を因果操作する能力ぐらいは持ってるんですよ!?」
もはや空いた口が塞がらぬ即答へ、言い様のない無力感が襲ったエージェントの耳へ……彼の思考を研ぎ澄ませる言葉の羅列が突き刺さる。
「待て——因果操作?それを詳しく聞かせてくれないか。……っと、なんて呼べばいいんだ?」
少女神様の苦し紛れに放った言葉へズイッ!と詰め寄ったエージェント。その宿る真っ直ぐな眼差しにドギマギしながら、少女はその全容を語り始めた。
「えっ……と(汗)私の名前はアリスと言います。あのですね、私の能力である因果操作と言うのは——」
背後に音も無く……否、暴力的な咆哮を上げながら迫る脅威にも気付かぬままに——
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