神様は襲われました!

「むにゃ……ちくしょ、あの大神さまめ~~――」


 それは微睡まどろみの中よりの覚醒。

 自分としてはそんな感覚だったのを覚えています。

 その瞬間までの私は自身が転生してしまうと言う、珍事件の渦中にある事など夢にも思っていなかったのです。


「――ろ!起きろ、貴様!名を名乗れ!」


「んにゃ?五月蝿いな……私は今大神さまからの難題に頭を悩ませ――ふぇっ!?何!?何これ、どうなってんの!?」


 端的に言いますと――びっくりです。

 ちょっと、私の双眸へ映ったのは姿……それが――まさかの、それはもう気が動転してもおかしくはないであろう事態でした。

 と言いますか、何で私は今ナイフを突き付けられているのでしょうか?

 そして私の御髪が金色とは一体全体何の冗談なのでしょうか??


 そんな慌てふためく私を見た、今まさにナイフを突き付けている若者が……ちょっと安堵した様な嘆息と供に私の状況が理解に至る言葉を零したのです。


「……何だ?今回の転生者はまたえらく腑抜けたのが来たな(汗)脅威とは無縁の姿――さしずめ女神でも気取ってここに来たか?」


?……えっ、あれっ!?今転生って言いました!?あなた――」


「ああ、言ったな。この世界へ転生で送られて来る奴は大抵世界に降る雷光――それこそ神気取りで降臨して来やがるからな。って……お前転生者のくせにそんな事も――」


「あの……いえ――大変申し上げ難い事なのですが、私は現状を把握してしまったみたいです。身体の反応からすれば、本来の私は見る影もなく……ですがなけなしの神霊力は有している所を考察した結果――」

の私が……どうやら凡ミスによりみたいです。」


 私の発した言葉が、僅かに白けた様な空気を生み――時間が停止します。

 直後それを壊したのは、眼前の男性の爆笑する声でした。


「ぶっ……くくくっ!あっあははははっ!なんだよそれ!?どんなドジ踏んでんだよ!オレでもこの世界での戦いは長いけど、そんな間抜けな事例は初めてだぜっ!?」


「ちょっ!?何もそんなに爆笑しないでもいいじゃないですか!?確かに私だって、ブラックすぎる大神様の指示にいつも振り回されて失敗とかありましたけど――って、も~~笑わないでーー!?」


 初対面にもかかわらず一頻ひとしきり爆笑をかましてくれた青年は、よく見ると異世界系の住人にしてはサイバーな衣服に身を包んでいたのに疑問を持った私。その浮かんだ疑問のまま正体を問う事にします。

 そして直後に想定外の言葉を聞く事になったのですが……。


「……って、あの――あなたよく見ると、全然異世界ファンタジーの住人に見えない衣服なのですが?そもそもここは異世界ですよね?」


「あんたもしかして、神様は神様でも落ちこぼれのたぐいか?異世界転生を平然と横行させる奴にしちゃ物を知らな過ぎる。この世界の惨状は、あんたらが異世界転生を横行させた結果だ――」

「異世界転生だけならいざ知らず、チートや俺TUEEEとか言う無秩序な法則を持ち込んだ結果――姿。言わば。」


「ほう……かい?えっ?」


 想定など遥か斜め上を行く言葉に続く名乗りは……むしろ私の心を高揚させる様な響きを孕んでいたのです。


「オレの名はビブリアス・リード。まあ呼び方はビアスでも何でも構わないが、所属は〈世界線物理事象防衛機構グランディック・セイバー〉――」

「S級エージェントのブリッドってのが、オレの通り名だ……無知なる神様よ。」


 まるでSFを彷彿させる彼の素性が、私の中に眠る反骨精神に火を付ける事になったのでした。

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