第8話 ショゴス
9月24日の朝、何時ものように3人で食事を済ませると年男は、聡太郎に学校を休むように伝えてきた。
出かける用事があると説明され、外出の支度をするように指示される。
アリスは前から承知していたらしく、2人は既に準備が整っていた。
3人は9時過ぎてから車で出かける。といっても2、3分車を走らせた崎原神社の駐車場に車を止めた。
そこからは徒歩で神社の北側に位置する崎原神社神官代々の墓所の脇の登り口から、鬱蒼と木々が茂る坂道を登っていった。
曇り空だったが気温は暑く、坂道では汗ばむほどだった。
年男は道すがら聡太郎に、夢を思い出さないか尋ねてきたそうだ。しかし聡太郎は山道を歩いても、この後に到着するあの場所を見ても、そこで起こる事件の後でも、結局夢を思い出すことはなかった。
聡太郎が記憶にないと答えると年男は『今から行く場所は、おまえの夢に出てきた広場だ、わたしが幼き時から信奉する神のお告げに従い、おまえを連れて行かなくてはならない』と説明したそうだ。
その場所を見つけたのは日曜日だったが、あいにくの雨で、翌月曜日つまり昨日、部下たちに草刈りをさせたと説明してくれた。
聡太郎は年男が何の仕事をしていたか、その部下たちのことも全く知らないし、父がいなくなった後も知る機会はなかった。
チャールズはわたしに、この事件後に聡太郎の保護は協会が担うことになり、年男と関係があった人間たちが聡太郎に接触できなくなったことを説明してくれた。
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坂道を登り切ると年男が話していた広場に出た。道はその広場で行き止まりだった。
ここが年男のいう『聡太郎の夢の広場』らしいのだが、聡太郎の記憶は全く蘇らない。
広場は岩場になっていて、北側の岩肌の壁面に崩れた形跡があった。
南側は木々が覆って僅かに覗く程度だが、確かに崎原神社や木津川を望めた。
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3人が広場に踏み込みと、異変は直様現れた。
突如硫黄臭が鼻をつき笛の音が響く、年男とアリスは周囲に目を配り警戒した。
聡太郎は2人の様子を横目で見やり絶望していた。
何故なら2人には硫黄臭と笛の音と同時に出現した目の前の怪物が見えていないと悟ったからだ。
『怪物の体は
溶けていました
湧き出していて
泡立っていて
膨れ上がっていて
萎んで
破裂していました
皮膚は黒くて染みのように茶色、緑色、赤、黄色、など混じっていて
でも、体は形を次々に変えていたから、染みの場所も変わってしまったり消えたりしていました
体から幾つも触手が生えて
それはバラバラに飛び散る自分の肉を拾っていました
触手は拾った肉を
体に開いている穴に繰り返し投げ込み
穴は肉が投げ込まれると直ぐ閉じてしまうけど、また別の場所に穴が開きます
穴が開く時は笛のような音がして
体は膨らむと象くらい大きくなりました』
聡太郎は夢を憶えていないが、それなりに分別は備わっていたからこの怪物が自分の夢に出てきた『ショゴス』と年男が呼ぶ存在だということは分かった。
「そこに居るのか?」年男の声に気づき、怪物に目を奪われていた聡太郎は年男へと視線を向け振り返る。
しかしもうそこには年男の姿は無かった。
直様怪物に視線を戻すと、一瞬だけ触手に捕まり穴に投げ込まれる年男を見た気もした。
アリスは数本の触手に捕らわれたが、穴には投げ込まれず、触手によって陵辱されていた。
その後のことは聡太郎は『怪物は満足させたから元の世界に帰っていった』とチャールズに説明したそうだ。
怪物が去ると、アリスは紺のブラウスやスキニーパンツを破かれ、白い乳房やら陰部の薄い毛を露わにして横たわっていた。
彼女は目を見開らき涙を流し、引き笑いをしている口からは涎を垂らしていた。
アリスを連れ行くのは難しいと考えて、聡太郎は1人で崎原神社に戻った。
そこからアリスの知り合いである協会員に連絡して、2人は保護された。
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