ラノベは自己責任の刷り込みに余念がない

 弱者が社会や周囲から排除されていると声を上げたら、すぐさま弱者のせいとして逆に糾弾する自己責任論。

 弱者や少数民族を心底見下していても、直接の攻撃行為には出ない一般人を主な読者とするライトノベルでは、そんな自己責任論を心を傷めず息をするように喋れるようになる物語が好まれる。


 民族出自を本当の理由にして就職を拒まれた弱者がいる。

 または、周囲が受け入れぬがゆえに周囲を堂々と見下すようになった者がいる。


 ライトノベルは、周囲から排斥されているそんな彼らを主人公にすることはあっても、決してそのままにはしておかない。

 必ず、周囲は正しく、非は弱者で孤独なお前のほうに有るというかたちで話を決着させる。後者が主人公の場合、「最初の主人公の発言=クリエーターが心から嫌悪する価値観や趣味のかたまり」と考えて、ほぼ間違いない。


 物語で周囲は弱者を虐めない。虐めたら、弱者の主張に一定の理が備わっていることになってしまい、読者の心を動揺させてしまう。だから、主人公である間は虐めない。(終わったら・・・)

 少数民族や異能力系の弱者な主人公は、主流民族で構成される周囲の優しさを知る。すると、相変わらず周囲へ異議を唱え続ける自分以外の少数民族を、文句を言わず勤勉に働けと叱咤し、先頭に立って敵対するようになる。その過程は「成長」として肯定される。

 主流民族な一般読者にとって、まったく胸を痛めなくて済む展開だ。俺たちに尽くす弱者Aを以て、敵対してくる弱者Bを狩らせろ。弱者同士で決して連帯するな。孤独系め、少数民族め、俺たちと無関係な奴ら同士で、二度と団結できなくなるまで憎みあえ。分断して統治せよ。すべてはお前たちの自己責任だ。


 非主流な出自の主人公が、RPGでよく展開するお話だ。この場合、弱者Bは世界を滅ぼすラスボスである。






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