~Epilogue~
見上げた空に白い翼を羽ばたかせて鳩の群れが舞い上がっていく。
真新しいトランクを手にハンスは通りすぎていく鳩の群れを見送った。
今彼が経っているのは、聖都の南側にある国の鉄道網の始発にして終着のターミナル駅。
ドーム型の屋根を有した構内には荷物を手にした様々な人々が行き交っている。
蒸気機関車の登場により、短時間で島国であるクリスタリアの隅々までを往来する事が出来るようになってから人々の移動は忙しないものになっている。
夕暮れに地近付き、キラキラと光を放ちだすランプの光が、駅の構内を明るく照らし出し、現像的な雰囲気を生み出していた。
生まれてから何度両親の公務について地方へ行った事はあったが、蒸気機械に乗るのはこれが初めてのハンスは、仕事とはいえ、初めての旅路への期待で胸を膨らませていた。
「本当にいいのか、あいつ連れてきて」
駅の中を目を輝かせながら見つめているハンスを肩越しに見遣り、ランスは眉根を寄せた。
魔女・レベッカのお茶会で今回の任務がクドラク絡みだと分かった途端、フィーロはハンスの同行を躊躇った。
「しかし、一度許可をしてしまいましたからね...今更ダメとは言えませんよ」
汽車のチケットを三人分窓口で受け取りながらフィーロは肩を竦めた。
「それに、いい機会でしょう」
チケットを懐に仕舞いながら窓口を離れ、フィーロは徐に唇を持ち上げる。
「いずれこの国を背負っていく身の上なら、早いうちから自分の宿敵と対峙するのは大事でしょうからね」
ハンスを手招きで呼び寄せながら、フィーロは何処か楽しげに笑う。
その表情に逞しさと師としての自覚を見出してランスは思わず苦笑した。
弟子、ハンス・フォン・ロードナイトを加え、フィーロとランスの旅は新たな局面を迎えようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます