4−2「奇妙な台座と指示」

(…さて)僕は引き戸を開けるとゆるゆる旧校舎の中へと入っていく。


人気のない学校の玄関、本来なら子供が出入りするはずの場所。

でも、そんな玄関でも人がいないとどこか異質な感じを受けてしまう。


(…学校の怪談って、こういう場所から生まれるんだろうな。)


一人のためかそんなことを思い浮かべてしまい苦笑するも、気を取り直してジェームズに貸してもらったビニール製の靴袋を玄関で着用する。これは、有事の際にすぐに外に出られるように靴の上から履くものだが、寒いだろうからと借りた厚手のパーカーを羽織り、上から埃が落ちてくるかもしれないのでビニール製の帽子をかぶってマスクと軍手とゴーグルも着用する。


主任のメールでは防護服を着用しろとまでは書いていなかったが、装備はちゃんとしておくに越したことはないとジェームズは言っていた。


(夕方までに手早く済ませないとな。何しろこの校舎、結構広い感じだし。)


そして廊下に歩き出した時、僕は校舎の中庭に置かれた妙な台座に目がいった。


コンクリート製の長方形の台座。右と左に並んで置かれたそれは、上に何か載っていたのか大きなシミが左右についている。


(なんだ、あれ?)一瞬、その台座にデジャヴを感じ、よく見ようと近づくも、清掃のためにここに来ていることを思い出し慌てて廊下を進んでいく。


すると社内用のスマートフォンが振動し、主任からのメールが来ていた。


『遅い、早く上から始める。』


(…まるで、見られてるみたいだな。)


主任からの端的なメールに苦笑しながらも、とりあえず指示通り上の階から掃除を始めてみることにした。

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