4話 このままじゃ新しい宇宙が生まれる
とある、人気のない町の深夜。
寝静まった宿屋で、シンジのベッドに潜り込んでくる者がいた。
既に衣服は脱いでいるのだろう。
きめ細かな肌が、シンジにのしかかる。
唇。乳房。脚。女性的な柔らかな曲線を感じる。
真夜中の一室に、
細い、しかし剣を振り続けた力の強い指が、シンジの手を下腹部に誘う。
「このサムライエルフ、主の
「遠慮します」
シンジの手に、確かな感触を残し
平たい言い方をすれば、チン〇がガッチガチになっていた。
「……だめですか」
「うん、だって出てるところ出てるけど、付いてるところも付いてるし」
「この半陰陽の身では、お役に立てませんか」
「うん、申し訳ないんだけど、シンちゃんまだ乳くせー十五歳だからさ。あんまし
「では、せめて添い寝だけでも」
「いやいいよ。狭いし、乳くせーとは言ったけど、子守歌がいるほどじゃないし」
「いえ、従者としての立ち位置が未だ定まらぬ中、性の捌け口となることも断られたのでは、もはやこうするより自分を保っていられませぬ」
「いいよもう、キャラはおいおい固めてこ? この作品全年齢対象だし―――ん?」
シンジが、もぞもぞと動く別の気配に気付いた。
細身だ。というか小さい。コツコツと当たる感触は、角だ。
「シンジよ、このわしが来てやったというのに、既にエルフと
「違うわ」
ウォムリィが楽しそうに拗ねた口調で言うのを、シンジは冷静に言い返す。
「魔王の娘とまぐわえるのじゃぞ? もっと喜ばんか」
「のじゃキャラ小鬼還暦幼女は、百歩譲って合法かもしれんけど、見た目的にも種族的にもNGデース」
「好機を自ら手放すというのか。甲斐性のない男じゃ」
「魔王の娘さんを前にしてシンちゃんの愚息さんが怯えて出てこないんですぅ。なんか根源的な生命の危機を感じてるんですぅ」
「それはあるかもじゃ。なんせ、わしがお主を気に入ったのは、何とも殺し甲斐のありそうな人間だったからじゃて」
「惚れた理由が
ウォムリィとぎゃあぎゃあやっているとふた〇りエルフがすり寄ってくる。
「主シンジよ。もしやこれは放置するという名の性戯でありますか」
「違いますぅ。二つの
『シンジさぁん。皆さんもズルいですよぉ。マイトも一緒に寝たいですぅ』
「寂しがり屋の
「おぉ……なにやら騒がしいと思い馳せ参ずれば、シンジ殿の勇者殿が大暴れでございましたか。では、ごゆりと―――」
「おい待て生臭レッサーオーク。下ネタは後でいくらでも聞いてやるからこの銀河系軍団を止めてくれ」
「ふふ、限りなく百鬼夜行に近い夜這いですな。
どれ、
「まずい、このままじゃ新しい宇宙が生まれる」
シンジ は にげだした !
※※
賑やかな夜が明けた。
今さらのようだが、ホロギウムは広い。
妙ちくりんな旅人が、頑として転移魔法陣を使おうとしないせいで、かれこれ一〇〇日ほど旅を続けても、十字大陸の
そんな
ようやく、魔王の予測進路の町に入ることができた。
危険なので、既に住民には避難してもらっている。
ウォムリィの言った通り、気圧が下がり始めた。
空が暗黒の曇天に覆われ、虫や動物たちの声が消えた。
風が強くなり、止まっていた木造の宿屋がガタガタと揺れている。
木々が傾ぐ。遠雷の音。湿った空気の匂い。妙な高揚感が湧き上がってくる。
シンジは、この感覚をよく知っていた。
「これ、あれだ。台風が来る前にワクワクしてくるやつだ」
「それですな」
『それな、ですぅ』
「さすが主シンジ」
「おいらも認めざるを得ないぜ。無性に踊り出したい気分だ」
相変わらず呑気なシンジであるが、仲間たちもどことなくそれぞれにそわそわと気分が高揚している様子だ。
「ところでさ、魔王ってそもそもなんなの?」
「ふむ、ではここは拙僧が」
ジオが、シンジの素朴な疑問に答えることになったので、こちらも読者諸氏に、魔王について、ご説明しよう。
と、そこではたと立ち止まってしまう。
魔王とはいったい何者であるのか。
ホロギウムの誰も、それを説明しようと試み、失敗してきた。
少なくとも、フィアやジオといったヒト族や、ラルのような妖精、サムライエルフのような人造の生命体とも違う。
まったく違う
「さる高名な歴史家はこう語りましたな。
「世界珠? また新キャラの神様か」
「左様にございます。
ヒト・魔物・妖精・竜、我らすべての命を御創りになられた世界針さまは創造と混沌を。
世界珠さまは、それらすべての破壊、秩序を司ります」
「破壊と、秩序……」
「我ら命ある者は皆、生まれ出でたその日から、善良と邪悪が混然一体。
すなわち、世を乱し得る、混沌の存在なのです」
「世界は闇鍋で、俺たちは具材ってことか」
「ゆえに、それを打ち消す死こそが秩序と、そういうわけですな」
「で、魔王はそれを食べるゲテモノ食いと」
「誰がゲテモノ食いじゃ」
ジオがシンジに魔王講義をしていると、ウォムリィが割り込んできた。
「というか、自分らをゲテモノ呼ばわりするでないわ。自尊心を持たんか人間共め」
「「えへへ~」」
「何を笑っとるか!」
やけに優しい説教をされ、ちょっと照れるシンジとジオ。
「あ、ちょっと待って、なんか頭痛い」
シンジが頭痛を訴えた。
「偏頭痛じゃ! そろそろ魔王がこの町にやってくるのじゃ!」
「ほんと台風っぽいよねウォムリィパパ」
どことなく締まらない恰好で、シンジたちはウォムリィの父を出迎える。
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