Ex.3 私のお友達
まだ学校が始まって一週間くらいの頃、遠い大阪から引っ越したばかりの私は、友達作りに苦戦していた。
右を見ても左を見てもみんな誰かと喋っている。そこに私が入るスペースは存在していなかった。
もちろん引っ越してきたわけだから、そんなにすぐに友達ができるとは思っていなかった。
友達ができなくても、「まぁ私引っ越したばかりだし」と、余裕かまして窓の外を眺めているつもりだった。
しかし、始まって二、三日経って、休み時間の度に周りの人たちの楽しそうな笑い声が聞こえてくると、私は一人でいるのがだんだん耐えられなくなってきた。
誰か友達を作らないと。そう焦っていたある日の放課後の事……。
私は教室の端の方でボーッとしながら、なんとなく窓の外を眺めていた。
今日も友達作れなかったな……。
私が人見知りな性格なのもあるけどなかなか人に話しかけられない。
このまま一年間、いや、三年間一人ぼっちなのかな……
「ねぇキミ。何ボーッとしてるの?」
「え?」
いつの間にか私の前の席に一人の女の子が座っていた。メガネをかけていて、背は少し低いのかな……?なんだか全体的にふわふわしている。
「あれ?今気づいたの?さっきからずっとここで座ってたのに。大丈夫?具合悪いの?」
「えっと……あはは……大丈夫だよ?多分」
人見知りが発動してうまく話せない。
「キミ、名前は?今まで話したことなかったでしょ?」
この子は私と違って初対面でもグイグイくるなぁ。
「えっと、私は田村舞。マイって気軽に呼んで欲しいな」
うん、イメージトレーニングと一言一句変らない。良く頑張った、私。
「うんうん……マイ……よし覚えた!これからよろしくね!マイ!」
「うん!……えーっと、君は……」
うぅ……この子の名前がわからない。
「ん?名前?ナツミはナツミだよ?湊川夏海」
「えっと……よろしくね!ナツミ!」
「うん!」
ようやくお友達ができたような気がした。私だけが一方的に思っていることかもしれないけれど、なんだかそんな気がした。
「そういえば中学校どこなの?もしかして近くじゃない?」
ナツミが聞いてきた。この子は勘が鋭いのかな。
「良くわかったね、実は私大阪から来てて……」
「えー?!大阪?!」
ナツミは食い気味に驚いた。
「うん、そうなんだ」
「大阪の割には関西弁とか出ないんだね」
「あんまりクラスで浮かないように抑えてるんだけど……」
「だから話しづらそうにしてたの?」
「あー……まぁそんな感じかな?」
本当は人見知りなだけなんだけど、この際関西弁のせいということにしておこう。
「なるほどー……じゃあこれからもっとクラスに馴染めると良いね!一人じゃ難しかったらナツミも手伝ってあげるから、みんなに馴染めるように頑張ろ?」
「ありがとう……!」
この子は良い子だな。
「それにしても大阪かー、あれでしょ?グリコとか通天閣とか……」
「良く知ってるね」
「えへへーナツミたまに家族で旅行で行くんだー大阪」
「そうなんだ!」
いいセンスしてるねー。
「たこ焼きとかお好み焼きとかー……」
「おいしいよねー」
「うん!ナツミ、旅行で大阪にいったらいつも食べるんだー」
「いいねー」
いいよねー、ああいうの。
「ナツミあれ知ってるよ?」
「あれって?」
「大阪の人って大阪のお好み焼きを広島のお好み焼きと一緒にされるのを嫌がるんでしょ?」
「おぉ、良く知ってるね……」
なんで知ってるんだ……?
「ナツミー何やってるのー?」
どうやらナツミは他の友達に呼ばれたようだ。いつの間にか話し込んでいた
「んー?この子と喋ってたー」
「ほーら、早く帰るよ」
「はーい」
ナツミは友達に呼ばれて立ち上がった。
「あれ?マイ、何ボーッとしてるの?やっぱり具合悪いの?」
「え?」
「いや、何そんなきょとんとした顔してるの?ほら、帰るよ」
ナツミは私に手を伸ばした。
「え、でも私ナツミ以外のことまだまだ仲良くないし……」
「そんなの関係ないよ!これから仲良くなっていくんだから!ほら行くよ!」
「ちょっと!引っ張らないでナツミー!」
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