第22話 お土産

 ガラガラ……


 部室の扉が開いて、ホタル部長とココ先輩が入ってきた。


「ただいまー!」

「おかえりなさい!」


 私はそう言ってホタル部長をハグした。


「おぉっ!びっくりした!久しぶり、マイちゃん」

「久しぶりです!先輩たちの修学旅行の間だけなら大丈夫って思ってたんですけど、いざ居なくなると寂しくて……」

「かわいいなぁ……」


 そう言ってホタル部長は私の頭をヨシヨシと撫でてくれた。


 先輩たちの修学旅行の関係で、先輩たちに丸々一週間会えなかった。

 たかが一週間、されど一週間。

 間違いなく私の今までの人生の中で最も長い一週間だった。


「えっと……どこに行ってたんでしたっけ?」

「アタシたちはシンガポール!」


 あぁ、そうだった。うちの学校はコースによって修学旅行の行き先が違うんだよな。


「ナツミ向こうで何があったか聞きたい!」

「私も!」


 お土産話が聞きたい。

 みんなで椅子に座って話をする事にした。

「これがマーライオン」


 ココ先輩のはスマホにはマーライオンと全く同じポーズをするホタル部長が写っていた。


「やっぱりシンガポールといえばマーライオンですよねー」


 そのイメージが強すぎる。


「でもなんかそう言われる割には……」

「うん、アタシはココの言いたい事がよくわかるよ」

「そんな言い方してたらナツミたち余計に気になっちゃうよ」

「いや、まぁそんな大きくなかったっていうか?……ねぇホタル?」

「んー、まぁ有名な割には想像より大きくなかったね」


 すごい微妙な反応してるなぁ……。


「ここは凄かったよ!みたいなところは無いんですか?」


 もっと楽しそうな反応が見たいな。


「んー、やっぱり泊まったホテルかなぁ」


 そう言ってホタル部長が見せてくれたスマホには、とても大きな建物が写っていた。

 高層ビルのような建物が三つ並んで建っていて、それらの上に船の甲板のような何かが乗っている。


「すごい建物ですねこれ」


 日本にはこんなの絶対無いな。


「中はキレイでとても広かったよ。わたしたち二人で歩き回ってたら迷子になりかけたよ」

「フロアマップが英語だから結構困ったよね」


 そう言いながらホタル部長はいろんな写真を見せてくれた。


 建物の中にある水路の写真や、屋上のプールで夜景を背にみんなで撮った写真。他にもホテルの写真だけでなく、街中の写真や地下鉄の写真、空港の写真も見せてくれた。


「良いなぁー……」

「そんな事言ってるけどマイちゃんも来年行けるでしょ?」

「……確かに」


「そういえばお土産は?!」


 お土産を期待したナツミが机に手を置いて目をキラキラさせている。なんだか見えない犬の尻尾が見えそう……。


「そんなに急かさなくてもちゃんと持ってきたよ。だから落ち着いて」


 そう言ってココ先輩は机に二つの紙袋を置いた。


「二人とも中を見ていいよ」


 ココ先輩がそう言ったので、私は紙袋の中身を覗いた。

 向こうのお菓子やキーホルダーなどが入っていたが、何より私の目に入ったものがあった。


「イルカだ!」


 大きなイルカのぬいぐるみだった。ふわふわでグレーの体をしている。


「それアタシが選んだの!ついこの前水族館に行った時にイルカのぬいぐるみ欲しそうにしてたから選んでみたんだ。喜んでくれた?」

「もちろんです!」


「おおー!」


 ナツミが声を上げた。ナツミの方を見ると、ペンギンのぬいぐるみをもっていた。


「あれ?水族館にでも行ってきたんですか?」


 こんなにも海の生き物のぬいぐるみがあるなんて。


「そうなの。向こうにも大きな水族館があってね。とっても大きかったよ」


 そう言ってココ先輩が水族館の写真を見せてくれた。

 すごい……前行った水族館よりすごいかも?

 なにこれ……床にも魚が泳いでいるのかな……。

 写真の中には、大きな手さげカバンに今私が持っているイルカのぬいぐるみを入れて歩いているホタル部長の写真もあった。


 それにしてもこのイルカかわいいな……。

 ギュッと抱きしめてみると、ちょうどいい大きさでふわふわだ。ちょっと今日の夜一日だけ一緒に寝てみようかな。


「そのイルカはアタシだと思って大切にしてね!」


 ホタル部長がイルカを抱きしめている私をギュッとハグした。


「はい!」


 よし、一日だけとは言わず今夜から毎晩一緒に寝よう。

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