第19話 やりたい事①
ようやく制服がブレザーに戻った。
この学校季節感狂ってるんじゃないかな。半袖になるのも遅いし、長袖に戻るのも遅いし。なんか半袖の期間すぐに終わったな。半袖ならではの出来事があったのかと言われると特になにもなかったけど。
部室にいるみんなももちろんブレザーだ。やっぱりこっちが見慣れている。
「みんなやりたい事とか無いの?」
ホタル部長が呟いた。
部室にいる四人がそれぞれ本を読んだり、スマホを見たり、寝てたりしている。この感じを見てると、正直言ってみんな暇そうだ。そして暇に耐えかねたホタル部長が話を始めた。
「やりたい事ですか?」
やりたい事かぁ……。
「うん。将来やりたいこととか、今やりたい事とか」
「ナツミ、一回で良いからスカイダイビングしてみたい!」
スカイダイビング?!
「え?ナツミ怖くないの?高いところから飛び降りるんだよ?」
私はナツミのメンタルに驚いた。
「パラシュートを持った一緒に飛ぶ人が居るから大丈夫だよ!」
すごいなぁ。怖くないのか。
「ナツミちゃん怖いのは大丈夫なの?」
ホタル部長が聞いた。
「いや、お化けとかは無理ですね」
文化祭であんなに怖がってたもんね、ナツミ。
「じゃあスリルを味わうタイプのやつが好きなの?」
「そうですね、ジェットコースターとか大好きです!」
ココ先輩にナツミは笑顔で答えた。
「ジェットコースターとか二度と乗りたくないよ……怖いし酔うし……」
「えー?楽しいのに。今乗ったら楽しめるかもしれませんよ?また今度一緒に乗りましょうよ」
「いや!たとえ隣にナツミちゃんがいるとしても絶対にいや!」
「行きましょうよ!」
「いやだ!え、えっと、ココはなにかしたいことある?!」
ホタル部長はナツミから逃げるようにココ先輩に話を振った。
「え?わたし?そうだなー、やっぱり小説の舞台になった街とか行ってみたいな」
「良いですねそれ!」
とても楽しそう!
「でも行きたい所はどこも遠いんだよね。北の方だったり、逆に南の方だったり。時には海外だったりするし……」
「それはなかなか行けないですね」
海外は流石に遠すぎるなぁ。
「高校生じゃ厳しいんだよね。お金面が特に」
「確かにそうですよね。でも良いなぁ。海外かー」
「アタシたちは修学旅行で海外行くもんね!」
ホタル部長はそう言ってカバンから修学旅行のしおりを出した。
私はしおりの表紙を少し見た。
「なになに……シンガポール……?」
「良いなー……ナツミも行きたい!マーライオン見てみたい!」
「ふふーん、良いでしょ!」
ホタル部長はちょっと自慢げに言った。
「まぁ修学旅行だから君たちも来年行けるけどね」
「確かに……」
ココ先輩はホタル部長に言った。
「お土産買って来てくださいね!」
ナツミが先輩達に言った。ちょっと厚かましくない?
「もちろんだよ!期待して待ってて!」
「やった!」
ホタル部長は親指を立てて言った。優しくて良かった。
「何かこんなもの買って欲しいなみたいなのはある?」
ココ先輩が聞いてくれた。
「私はずっと使えるものが良いですねー」
「ナツミは美味しい食べ物!」
思いっきり真逆じゃん。
「わかった。ちゃんと覚えておくね」
ココ先輩はそう言いながら小さなメモ帳にメモを書いていた。
あれ、そういえば。
「話がだいぶそれましたけど、ホタル部長がやりたい事ってなんですか?」
「え?アタシ?」
聞かずに終わる所だった。
「そうだなー……うーん。あ、そうだ!」
ホタル部長は突然ポンと手を打った。
「この四人でどこか遊びに行きたい!」
四人でどこか遊びに行きたい……?
「あ、そうか。わたし達だけで休みの日にどこか遊びに行く事って無かったんだ」
「そう!ココの言う通り!夏祭りには行ったけど、ただの休日にどこか遊びに行ったことが無いんだよ!あとナツミちゃんは夏祭りの時にはいなかったし……。とにかくみんなで遊びに行きたい!」
ホタル部長は拳を固く握りしめて言った。
「ここはせっかくなんで、どこ行くかはナツミちゃんに決めてもらおうよ」
「……え?ナツミ?」
ココ先輩に話を振られてナツミは少し困惑しているように見えた。
「えっと……そうだなー。ナツミ水族館に行きたい!」
おお水族館!
「良いねそれ!水族館!」
ホタル部長はとても乗り気だった。
「いつ行く?もうなんか早いうちに行きたいな。いっそ次の日曜日にしよう!」
「え?!そんなすぐですか?!」
「ダメかなマイちゃん?」
「いや大丈夫ですけど……」
「じゃあ次の日曜日はみんなで水族館に行こう!学校近くの駅前に集合ね!」
……行動力がすごいな。一瞬で決まっちゃった。
②へつづく……
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