第8話 ベッド
私、今日は良い事がありました!テストで良い点数取ったんです!国語なんでクラス1位ですよ?先輩達に言ったら褒めてくれるかな……?
マイは期待に胸を膨らませながら部室の扉を開けた。
しかし、そこには先輩達の姿は無かった。
あれ……一番乗りなのかな。
「んー……まいちゃーん……」
しかし、耳を澄ますと、誰かが私を呼んでいた。……この声はホタル部長?でも姿はどこにも見えないんだけど。こわっ。
とりあえずカバン置こう、重い。
ってあれ?
私が動くと見える景色も変わる訳で、何が言いたいかと言うと、小学生が給食を食べる時のように向かい合わせに並べられわた机の向こう側、ドアからは隠れて見えないところにホタル部長が居た。ベッドですやすやと寝ている。
ベッドで寝ている……?
昨日までベッドなんて無かったのに……あー、顧問の仕業か。どうせ『保健室から持ってきた』とかそんなんでしょ。きっと台車を使って持ってきたに違いない。顧問はそういう人だ。
それにしてもぐっすり寝てるなー。私がこんなに近くに居るのに、危機感ないなー。ちょっとくらい触っても起きないんじゃないのかな?
……はっ!何を考えてるんだ私!ホタル部長にいじわるするなんて!でもちょっと位いいよね?
ぷにぷに……
気づけば私は無防備に寝ているホタル部長のほっぺをぷにぷに……
やわらかーい……!
これはずっと触っていられるやつだ、お餅みたいに柔らかい。触ると癒される気がする、気がするだけかもだけど。とりあえず幸せになれた。ここだけ聞くとやばいお薬みたい……。まぁとにかく、1回ぷにぷにしてしまったらやめられない、ブラックホールみたいだ。
それにしてもこんなに触られても起きないとは……疲れてたのかな?
これならもう少し攻めたことしても大丈夫そうだね。と言ってもする事ないんだけど。
ベッドにスペース空いてるな……。
いやいや何考えてんの私。ホタル部長といっしよに寝る?
そんな勝手な事しちゃダメでしょ!
しちゃダメでしょ……!
しちゃダメでしょ……。
しちゃダメ……。
……いや、別にちょっとだけなら。バレなきゃ大丈夫でしょ。やばかったら抜け出せばいいだけだし。
じゃあお邪魔しまーす……
お布団の中、ホタル部長の体温で温かくなってる。この温かさ心地いい。
私がホタル部長と一緒の布団で寝ている幸福感を噛み締めていた。
ギュッ……
あれ、ホタル部長?なんか私抱きつかれてません?
それも私たち向かい合わせになってるし。なんか抱き枕みたいになってる。
どうしよう、バレる前に抜け出そうとしたのに、これじゃ抜け出せないじゃん。
起こしたら可哀想だよね……
スヤァ……
なんかホタル部長めっちゃ嬉しそうな顔してるんだけど!いい夢でも見てるのかな?もうこれ起こせないし、なんなら身じろぎひとつおこせない。
やばい、まったく動かないとなると、ホタル部長の温かさで私も眠くなってきた。
このまま寝ちゃってもいいかな。ホタル部長が起きるまでに起きれば大丈夫だよね……。きっと起きたらホタル部長の体勢も変わってるでしょ。うん、大丈夫。寝ちゃおう……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「んー?まいちゃーん?」
私は誰かから呼ばれて目を覚ました。ふと目を開けると、目の前にホタル部長が優しい笑顔で私を見ていた。
「おはよう、マイちゃん」
「あ、おはようございます……」
ホタル部長が起きる前に起きれば良いなんて考えてたのに、いつの間にかホタル部長に起こされていた。
「起きたらマイちゃんが隣で寝てたからビックリしたよほんと」
「あはは……、魔が差したというかなんというか……。迷惑でしたか?」
「いや全然?むしろ嬉しかったよ!」
一緒に寝られたら嫌かと思ったけど、意外にすんなり受け入れてくれてるし、むしろ嬉しく思ってくれてるのか。やった!
「どうしたの?そんなニヤニヤしちゃって。ほら、そんなベッドの上でボーっとしてないで、下校時間近づいてるよ、早く帰ろ?」
「はーい!」
これから部長がベッドで寝てたら積極的に潜っていこう。うん、それがいい。
あれ、今何時だろう。私は、時計代わりにスマホを出した。
あれ、ココ先輩からメッセージが……なになに?
『君達ホントに仲がいいね。ちょっと嫉妬しちゃうよ。来た時から帰る時までずっと寝てたよ。』
メッセージにはこの文章とともに、ココ先輩が撮ったであろう、ベッドの上で2人で寝ている写真が貼り付けられていた。
寝ている時に無防備なのは私もだった……。
そういえば今日の私の目的はテストで高得点を取ったことを自慢しにきたんだっけ。完全に忘れてた。まぁいいか。帰りながら部長にいっぱい聞いてもらって、いっぱい褒めてもらおーっと!
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