第7話 GW

 担任はいつも終礼が長い。とりあえず長い話をしないと気が済まないようだ。日によっては前日と同じ話をすることもある。無理に話さなくていいのに。私は早く部活に行きたいの。


「えー、明日からゴールデンウィークに入るんですけどもー、まぁそうですね、早寝早起きして生活リズム崩さないようにね」


 私は頬杖を突きながら先生の話を半分聞き流していた。そんな事を話したいの?小学生の頃も中学生の頃も毎年言われたよ。流石にもう分かるって。


 それにしてもゴールデンウィークか。学校が休みと言う事は部活も無いのかな……?もしかして先輩達に会えない日が続くの?!うぅ……考えてなかった。

 いや、もしかしたら休日に遊びに誘えば会えるかも!図々しいけど聞いてみようかな。


 とりあえず早く終礼終わらせて解散してよ、先生。


 ###


 あれから15分後、私はようやくゆるふわ部に着いた。まさかあれから10分も喋るなんて。


「んー?マイちゃんどうしたの?顔が疲れてるよ?」


 椅子に座るなり、ホタル部長が顔を覗き込んで心配してくれている。


「いやー、終礼で先生が長話するんで待ちくたびれたんですよ」


 結局あの人は20分くらい話していた気がする。


「マイちゃんがいつも来るのが遅いのは担任のせいなのね。わたしたちも早く会いたいって思ってるのにホント迷惑な先生だね」


 ココ先輩も腕を組んで頷きながら私に同情してくれている。早く会いたいって思ってくれているのがちょっと嬉しかった。


 それからは他愛もないお話をしたり、お菓子を食べたりいつものように過ごしていた。

 普通なら楽しめるのだが、今日は2人のゴールデンウィークの予定を聞かなくてはならない。なんなら遊びの約束もしたい。でもこのままじゃそれができない。私は少し焦った。


 そんな時ホタル部長が話題を切り替えてくれた。


「明日からゴールデンウィークだけど、何かする事あるの?」


 意思を汲んでくれたのか、たまたまなのかは分からないが、助かった。


「わたしは友達と遊ぶ予定がいくつかあるね」


 ココ先輩はそう言いながら指を折っていた。あの感じだとまぁまぁ多そうだ。


 ホタル部長はココ先輩が羨ましそうだった。


「いいなーアタシも友達と遊びたいよー」


 ホタル部長の口ぶりじゃ何かあるのかな?私は少し聞いてみた。


「ゴールデンウィーク中に何かあるんですか?」

「いやー、家族旅行に行くんだよね。普通に楽しみだけど、友達と遊べないのかー。考えてなかった」


 ホタル部長がちょっと悔しそうだった。


「マイちゃんはゴールデンウィークの予定あるの?」

「私ですか?」


 ココ先輩がまだ予定を聞いてない私に振ってきた。


「私も遊ぼうとしたんですけどねー、友達は全員何かしらの予定が入っちゃってて……。もしかして先輩達ならって思ったんですけど、この感じじゃ開いてないですよねー……。というわけで完全にフリーです。暇です」


 言っててなんだか悲しくなってきた。


「それは残念だったね、まぁ一人でもいつもと違う事で気分転換くらいは出来るからね。お散歩とか」


 ココ先輩がフォローに入る。なんだかフォローになってないような……。


「やる事ないんで家でゴロゴロしときます。そういう日も大切ですしね」


 結局自分で割り切った。家でゴロゴロしよっと……。


 ###


 ゴールデンウィークに入ってしまった。

 暇すぎてゴールデンウィーク用に出されたちょっと多めの課題は、あらかた片付いてしまった。まだ折り返しにも入っていないのに。


「うー暇だー!」


 私以外誰もいない部屋で叫んだ。今は大体昼過ぎくらいかな。テレビ見ても面白いものなんて無い。スマホくらいしか触るものがない。同じゲームやりすぎて飽きたな、新しいゲーム入れようかな。それにしても先輩に会いたいな。ちょっと寂しい。


 そんな事を考えながらSNSに飛んだり、ゲームを遊んだりしていると、突然スマホが鳴り出した。誰だろう。


「ホタル部長?」


 画面にはホタル部長のLINEのアイコンが出ていた。そういえばゴールデンウィーク前最終日に交換したんだっけ。

 とりあえず出ないと。


「はい、もしもし。ホタル部長?」

『あ、マイちゃん?今どこに入る?』

「絶賛家でゴロゴロしてました」


 いつもの聴き慣れたホタル部長の声だ。


「それにしてもどうしたんですか?旅行にはいってないんですか?」

『いや、旅行にはきてるよ。ただマイちゃんそろそろ誰にも会えなくて寂しがってる頃かなーって思って』

「いや、まだ大丈夫ですよ?」


 なんで心を読まれてるんだろう……。


「そう?ならいいけど。そうだ!ちょっとビデオ通話にしない?マイちゃんは旅行気分を味わえるし、アタシもマイちゃんの顔が見たいからちょうどいいでしょ?」

「おお!いいですねそれ!」


 それからすぐに画面にホタル部長が映された。


『どう?見えてる?』

「はい!バッチリですよ!」


 ホタル部長の後ろには白いタワーのようなものが見えた。


「そこどこなんですか?後ろにタワーっぽいのが見えるのですけど」

「ここは京都だよ!後ろのこれは……多分京都タワー!」


 多分なんだ……。


「これからどこに行くんですか?」

『多分水族館かな?』

「あー!いいですね水族館!楽しんで来てくださいね!」

『うん!写真撮って送るよから待っててね。』

「ありがとうございます!楽しみにしてます!」


 ここで通話は切れた。


 短い時間だったけど楽しかったな。あ、「お土産楽しみにしてます!」とか言ったほうが良かったかな。流石にそれは図々しすぎるか……。


 この日の夜、ホタル部長からたくさんの写真が一気に送られてきた。通知が怖かった。

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