第2話 LOVEずっきゅん/相対性理論

二十九歳OLレズの私一条成美は恋人ができない事に信底、孤独を覚えていた。そんな時同級生の「氏神こだま」から突然「あなたの家にいっていいいか」と電話がきた。恋人がいない私は独りの環境に耐えきれず、同級生にいきなりキスをしてそのまま彼女にするという突拍子もない作戦を思いついた。

 

 彼女は急いで来るというので急ぎで午前零時すぎに掃除をはじめた。近所迷惑になるので掃除機は使わずに、辺りにあるゴミをゴミ袋に入れ、ほこりをダスキンで拭き取る。そうしているとある問題が立ちはだかる

 「あーこれどうしよう」

 狭い部屋を堂々とした面構えで構える、名作百合漫画と名作百合アニメが収納されたラックに頭を悩ます。氏神がこれを見たら、彼女は私に侮蔑の眼差しを披露するのだろうか。

 「風呂場に隠しとこうかな」

 しかし久しぶり再会した同級生がシャワーを使いたいと、願いでてきたらどうしよう。風呂場にラックがあるだけで、それがいかがわしい書物やDVDだと容易に断定できてしまう。

 「いやその時はその場でキスすればいいか」

 開き直ってラックの件を後回しながら、百合妄想に花を咲かせていると。インターホンが鳴った。

 「えっ早くない」

 突然の呼び出しの応答に受話器を取ろうとするも、いきなり立ったせいでその場で転ぶ。倒れ込んで、ふとこんな夜更けに何やってんだろとよぎるも

 「キスが待ってる。負けるな私」

 体制を立て直し受話器を取ると、かぼそい数十分前にきいた「氏神こだま」の声が聴こえた

 「一条さんこんな深夜にごめんね。」

 「あー大丈夫だよ」 

 そんな受けごたえをすると、百合棚が目に入った

 「氏神さんごめん。まだ掃除が終ってなくて後5分待ってくれる」

 彼女は何一つ曇りない澄んだ声で私に返す。

 「私は汚れていても、一条さんに会えればそれだけでいいですよ」

 あれ氏神ってこんな可愛かったけ。可愛い女子は深夜の寒空に放置してはならないという私の常識と戦いながらこう答えた。

 「氏神さん流石にそれは悪いから、五分たったら絶対入れるから待ってて。」

 「はい」と凛とした声が聴こえ尊いと胸をざわめかせると、受話器をそっと置いてラックに丁度その場にあった布を被せ応急処置を取った。ゴミ袋も押入れに突っ込んでこの部屋が汚かったという証拠隠滅にかかった。

 「よし、これであの女神を迎えられるぞ」

 昨日まで忘れていた、天使を迎えに玄関に行く。手を震わせながら鍵の施錠を解き、ドアノブを引くと十四年振りの彼女が立っていた。

 「久しぶり上条さん」

上は茶色のコート下は長い白いスカートに身を包み、地味なマフラーは巻いていた。

顔は童顔で二十九には見えないが、とても愛らしい顔をしている。つまり高校の時とさほど変わらないが、大人の色気を備えた不思議な顔に成長していた。

 「一条さんどうしたぼっとして。具合悪い」

 「えっいや氏神さんが、可愛くなってたからつい見とれてしまって」

 本音がでてしまう。彼女は屈託ない微笑みを見せた。私のフェチニズムを刺激する。

 「いえ、一条さんもとても綺麗ですよ」

 私は顔を赤面させながら部屋に招いた。今思えばこの時のドアが閉まる音は彼女と私の奇妙な生活の始まりの合図だったのであろう。


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