第5話

朝6時起床。


朝ごはんを食べ、身嗜みを整える。


カッターシャツの袖に手を通す。


アイロンがかけられたシャツ。


何年ぶりに着ただろう。


ボタンを閉める。



あ、ネクタイ。



思い出したように引き出しを開ける。


赤色。


父と母が誕生日プレゼントにくれた。


最初で最後のプレゼント。


四年前にくれたプレゼント。


そんなの買う金なんてなかったのに。



「ありがとう。」



襟に巻きつける。


あの時の気持ちが込み上げてくる。


言えなかった。


感謝なんてしなかった。


また会えると思ったから。


喉元が苦しい。


あぁ、締め付けられる。



面接には合格した。


人生で初めての真面目な就職。


趣味の時間は減ったけど、毎日は楽しい。


結局あの時、あのネクタイを外した。


でも、鞄の中に入れて今でも持ち歩いている。


すり減ってきた、赤色。



もう、後悔はしない。

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