第4話

真夏。


ジリジリと太陽が照りつける。


一つの墓を目指して来た。


水をかけ洗う。


花を供える。



家族とは死別した。


実家を出たというのは事実。


でもそれは、過去から離れるため。


新しい自分を見つける。


写真を撮ったり、散歩したり。


こんなに好きなことができるのは遺産。


いや、生命保険か。


どちらにせよ、そういうものがあるから。



でもそろそろ尽きる。


バイトだけじゃ生活費は足りない。


社会保障もあるけど、それも無理。


新しいバイトをするか。


定職につくか。


いや、この時期に就活か。


さすがにどの会社も受け入れてくれないだろう。



帰り道、坂を降りた。


店が立ち並ぶ商店街の中を通った。


信号で待つ間、ビラを見つけた。


求人募集。


まるで知らない会社。


面接日は明日。


募集要項は満たしている。


行くか。


行かないか。


明日。


そう、命日。

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