僕らの波。
佐々木実桜
静かな海だった。
どこかの漫画でテンプレとされた主人公×幼馴染の構図は、僕が居ることで阻まれているのだろう。
僕らはずっと一緒だった。
親同士仲が良くて、生まれた病院も、生まれた月も、僕、【
そして僕らの少し後に生まれた幼馴染三人組最後の一人、【
今日、梨花が僕に打ち明けたこの日までは。
「私、悠が好きなの。幼馴染なんだから、応援してくれるわよね?」
…
きっと梨花はヒロインだったのだろう。
幼馴染で、ずっと、主人公である悠太を支えてきた重要人物。某メガネ探偵でいうあの花の名前を持つ女の子だ。
ここで、僕は応援する以外に答えることが出来ただろうか。できるわけがない。
言えるはずがなかった。
僕が梨花を好きだってことも、そして、梨花が打ち明けるずっと前に、僕が悠太に告白をされ、キスをされたことも。
なんてくだらない三角関係だろうか、僕の好きな君の好きな人は僕が好き。きっとどこかの作詞家が書いていることだろう。
こんなに笑えることは無い。
三人並んだ出席番号にはしゃいだあの日が懐かしいな。
どうして、こうなってしまったのだろう。
悠太は良い奴だ。
圧倒的主人公体質といえる。ハプニングを起こしても間違いなく解決する能力があって、いつも皆の中心。ラノベでよく見る属性を付けるなら火間違いなしだ。あいつの人生における汚点は、きっと僕を好きになったことくらいだろう。
そして梨花は完璧なヒロインだと思う。
ツンデレというのか、いつも悠太には素直になれないがいつも悠太を想っていることは、ずっと梨花を見ていた僕が1番わかっている。
僕は気づいていた。悠太の僕への想いにも、梨花の悠太への想いにも、きっと誰よりも先に。
でも知らないフリをした。
何も知らないように悠太からの愛を受け、何も知らないように梨花を支えた。
しかし双方から面と向かって言われてしまっては、知らないフリはもうできない。
「翔さ、好きな人とかいる?」
そう聞かれた時点で、話の流れは大方想像ついていたのだ。
逸らさなかった僕が悪かった。
僕を翔と呼ぶのは悠太だけで、悠太を悠と呼ぶのも梨花だけだった。
矢印の方向でも表していたのかもしれない。
僕が梨花を特別な呼び名で呼ぶことは無かったのだけれど。
もし、僕がいなかったら。
きっとヒーローが血迷って男を好きになることはなかっただろう。
強い梨花より女々しい性格の僕の方がヒロインに見えてしまうことなんて、きっと。
それでも僕はここにいる。
ここにいて、今の今まで、三人で静かな海を漂っていた。
波風なんていつかはたつに決まっていた。
ただ少し早くなってしまっただけだ。
しかし、それにしては厄介過ぎやしないか、この波は。
乱れた波を、僕は鎮めることができるだろうか。
「ねえ梨花、もしも僕が_________って言ったら、どうする?」
僕らの波。 佐々木実桜 @mioh_0123
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★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 2話
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