第4話 僕が夢の中で経験していたのは…

そこで目が覚めた。

「あ、気が付いた?」

「なんだ。良治か」

「なんだはないだろう、なんだは」

目覚めてすぐにここは講義室だと気が付いた。いつの間にここまで来たのだろう。確か、電車の中で眠ってしまったところまでしかはっきりした記憶がない。あの後、無心で学校まで歩いたということだろうか。……それにしては妙だ。不思議には思ったが口には出さなかった。

隣で同じく講義を受けていた良治は大学に入ってから、取っている講座がおおむね一緒ということで友達になった。なんだか周囲がうるさい。何かあったのだろうか。

「南方教授、また休講だって。まったく、休むなら講義が始まる一時間前に言えよな」

「あれ……、そのことは、確か」

僕は確か、一時間目の南方教授の講義が休講だと、朝のバスで知った。だから二限目まで学校や、その周辺で時間を潰そうと思ったはずだった。休講だと言うことは、学校のホームページを見ればわかる。……それなのに。

「……休校の連絡が来たのが、たった今?」

何度確認してもホームページにはそう書き込まれている。おかしい。僕はどうやって講義の休講を知ったのだろう。

もやもやとした気持ちのまま、机に広げていた教科書と前回までのプリントを拾い、濃紺のリュックに詰める。すると隣で良治がまじかよ、と漏らした。

「何?なんかあった」

「なんか、近くで無理心中があったらしい。介護しきれなくなった母とその息子が一緒になって遺体で発見されたらしい。いやだよなぁ。最近こんなニュースばっかりじゃん」

なぜだか急に震えが止まらなくなった。

「なぁ、良治。南方教授のデイパックって何色だった?」

良治は少し考えたのち、

「黒に決まってるだろう?前の授業で言ってたんだから。いつも参考文献を持ち歩いているけど、このデイパックは見た目に反していっぱい入るって」

と言った。

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夢現 藤堂 朱 @aka-tohdoh

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