第3話 不思議な世界で出会った友達

朝ごはんはご飯とみそ汁と焼のりだった。普段朝ごはんはトーストを食べる光輝は朝から和食に驚いたが、すぐに大輝と並んで座って箸をとった。朝子は変わらず柔和な笑みを浮かべている。

三人で朝食をとった後、祭りの準備があるからと朝子は出かけて行ってしまった。昼食にも帰ってこれないかもしれないから、冷蔵庫の中にあるご飯を食べてねと言い残して。それまで大輝と暇をつぶすことになった光輝は何をしようか尋ねる。

「そうだな……。日が暮れるまで秘密基地に行くか? 」

「秘密基地? 」

聞き返すと得意げな表情を浮かべる。どうやら大輝一人で見つけた居場所らしかった。連れてこられた場所は家の裏山だった。ついていくと小さな洞窟がある。中に入るとひんやりと冷たい。入り込んでくる風がひゅうひゅうと音を立てた。洞窟内の赤茶色の地面を見れば、お菓子の缶詰やおもちゃが置かれている。これがどうやら大輝の秘密基地らしかった。

「母ちゃんが働きに行ってるときは、必ずここでいるんだ。一人で家にいるのは……、なんだか辛い」

「……お父さんは? 」

それまで聞きたくても聞きづらくて言えなかったことを光輝は口にした。ずっと気になってはいたが、込み入った家庭の事情に首を突っ込むのは気が引けていたのだ。

「……いないよ。最初っから、いない」

「……そうか」

それ以上は聞けなかった。大輝からこれ以上は聞かないでくれという雰囲気があったから。それから大輝は、お菓子の缶詰から、ラムネ瓶に入っていた奇麗なビー玉や、成績の悪かったテストなどを光輝に説明して見せる。聞けば朝子はほとんど学校の成績には興味がないのだという。まるで僕の両親と正反対だ、と思っていると、光輝はあるものを洞窟で見つけてしまう。大輝が缶詰に夢中になっているすきを見計らって、そっと洞窟の奥に光輝は足を運んだ。やはりそうだ、足元に何かが転がっている。

「……これ」

拾い上げるとそれは確信に変わった。石の頭だ。光輝が蹴飛ばした不気味な石の頭。どうしてここに。さっと拾い上げると、大輝に見つからないように短パンの後ろのポケットにそれを隠した。

立ち上がったまま、しゃがんでいる大輝に声を掛けようとして、光輝は言葉を失った。大輝の頭、ちょうどつむじのあたりに白くなって毛が生えていない部分がある。

「でも、いいんだ。今は一人じゃない、そうだろ? 」

大輝は何も気が付いていないように、光輝に呼び掛けた。光輝は何か言わなければと言葉を探したが、何も見つからず、曖昧な笑みを浮かべる。その笑顔の真意に気が付かなかったのか、大輝は純粋な笑みを浮かべる。いつものようにえくぼを見せて笑う大輝につられて光輝もやっと笑うことができた。

それから、大輝一人の秘密基地を僕たち二人のものにしようという話になって、家からいろんなものを運んだ。光輝が使った歯ブラシも、もう使わないからとおもちゃの缶詰の中にしまわれた。楽しかった。蝉がうるさく泣き喚く中、時間も忘れて秘密基地づくりに夢中になった。

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