3.IQの利用のされ方

(1)支援のための知能検査

 知能検査を行う主な目的は、発達の状態や困難な状況に関する情報を得て、支援や対策に役立てることです。目安としてIQ70未満は知的障害(ICD-10:『国際疾病分類』第10版)ということにはなりますが、障害と判定するのも支援のための1決定に過ぎません。知能に関して困ることがあるか、ということが大事なわけです。

 例えば、一口に学校での知的障害児への教育的配慮といっても、言語理解に課題があれば絵など言葉を使わない説明の工夫だったり、視覚推理に課題があれば言葉による分かりやすい説明の工夫だったりと、それぞれの得意苦手を把握することでそれに合わせた対応をすることになります。

 そのため、総合的なIQ以上に、どの分野がどれくらい苦手か、といったことを知ることが大切になります。


 知能検査は親とか本人が気になった場合に、専門機関で受けることができます。そのほかに、以下の法律に基づき、小学校入学前の就学時健康診断で原則全員に簡易的な知能検査が行われ、結果により精密検査を勧められることがあります。


学校保健安全法施行規則 第三条十:「知能については適切な検査によつて知的障害の発見につとめ」


(2)IQが低い人のためのもの

 IQは高さを競うようなイメージが広がっていますが、実際は上で述べたように随分違います。 元々の知能検査の理念から考えると、IQは高さを競うものではありません。主に低いIQの人のためのものといえます。

 では、IQの高さを競うのは、IQの考え方から外れているということなのでしょうか。…ところが、IQの考え方のもう1つの主流は、高さを競うことにあります。高い人が優秀で、高い人から選抜するという考え方です。知能検査は2つの考え方で100年以上歴史を紡いできたのです。


 今は昔ほどではありませんが、就職試験などで現在も用いる所はあります。特にIQ利用が積極的だったアメリカでは、差別や排除にIQが利用されてきました。今は是正されたものも多いですが、IQが知能を完全に示す絶対的な値であるかのような築かれたイメージは今も残っています。

 次回から、その歴史を見ていきましょう。

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