第6話


「どうしたケイスケ?」

 携帯を見つめた若者をスキンヘッドの男が声をかけた。

 ちらりと横目で若者は男を見るとなんでもない、と言ってソファから立ち上がった。

「なにか不機嫌そうだな?」

 その声に振り返ってケイスケは言った。

「D、何でもないよ。ちょっと知り合いと連絡が取れなくてさ」

 そう言うと赤いギターを手に取ってチューニングを合わせた。

「ほぉ、知り合いね」

 Dと言われた若者がドラムステックを回しながら笑う。

 それをケイスケがちらりと見て手を上げた。

「なんだよ、その笑い。なんか嫌だな」

「隠すなって。あの子だろう。バイオリニストの黒田律子、律ちゃんだろ」

 ちっと舌打ちすると、ふんと言った。

「ロックとクラシック、まるで正反対のカップルだな」Dが言う。

 おいおい、とケイスケが言った。

「まだ付き合っている訳じゃないよ、D。誤解しないでくれよ」

「でも付き合いたいのだろう。顔に書いてあるぜ」

 ケイスケは惚けることなく真顔でDに言った。

「そうさ、D。俺は真剣に大真面目さ」

 そう言ってケイスケは携帯を手に取った。

「本当は会って伝えたいのだが・・」

 そう言ってメールを打ち込み始めた。

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