第2話: TRPGの「システム」ってなに?

 GM編に書いた方がいいかなとも思っていたのですが、GM、プレイヤー関係なしに、ちょっとばかり整理しておいた方がいいことのように思えるので、こちらに掲載します。


 さて、TRPGという文脈で「システム」という言葉が使われたとき、どういうものを思い浮かべるだろう? どうも、「特定のTRPGのルールブックやサプリメントに記載されているもの一式」という使われかたがされているようだ。ここですこしばかり違和感を覚えた。それが、この記事を書いている理由だ。

 というのも、まず、「おおむね純粋な汎用システムのみ」が刊行されている例がある。それと、世界観を含めたものを「システム」と言う呼び方で同列に扱うのは、なにか違う気がする。

 ここで「純粋な汎用システム」と「世界観を含めたもの」という分類をしている。では、「純粋な汎用システム」側から見て、「これこそ最小限のシステム」と呼べるものはなんだろう? それは「判定ルール」だろうと思う。もちろん、判定ルールが存在しない —— そこはGM任せ —— のTRPGも存在するが、それは「GMが判断する」という判定ルールだとも言える。判定ルールと、ルールブック一式を同じ「システム」という呼び方をするのは、なにかおかしいとは思ってもらえるだろうか?

 もちろん、判定ルールだけでTRPGとして遊ぶのには慣れが必要だ。というか、判定ルールすら事前には決まっていなくてもTRPGとして遊ぶことはできるのだが、そういう遊び方をする人はすくないようだ。この点については、後に触れることもあるかもしれないが、TRPGという遊び、あるいは概念はそれくらいの自由度がある。

 判定ルールの他に、なにか「これくらいはあって欲しい」と思えるものはなにがあるだろう? これには、「補助的なルール」と「データ」があるだろう。「補助的なルール」は、幅が広い。ラウンド制とターン制を使うのか、使うのならそれは何秒程度に相当するのか。そこから、技能にどのようなものが必要かにも話は広がる。1ラウンドが短かい時間であれば、PCができる行動に時間という制限がかかる。そうすれば、1ラウンドにPCがどれくらい移動できるのかにもかかわる。あるいは、複数ラウンドに亘る行為をどう扱うかという話にも広がる。もちろん、常にラウンドでゲームが進行するわけではないから、絶対にという話ではないが。また、同時にPCに与える/受けるダメージはどれくらいかという話にもなる。強力な武器を使えば、一撃でPCが死亡することもあるだろうが、常に一撃で勝敗が決っするのでは、たぶん面白くない。だから、与える/受けるダメージがどれくらいなのかという話とともに、PCがどれくらいのダメージの累積に耐えられるかにも影響してくる。

 これには「データ」の話も絡んでくる。PCが常に素手で攻撃する場合であっても、どれくらいのダメージになるのか。さらになんらかの道具を用いることも普通だ。その場合、その道具はダメージにどれくらい影響するのだろうか。

 そして、PCを数値を用いて記述するならば、その数値はどれくらいの範囲を用いるのだろう? 判定のしやすさ、判定の成功のしやすさ、判定の結果に与える影響などを検討し、その数値の幅が決められる。この点は、PCをどう表現するかが先にあって、判定ルールはその後に作られたと思えるものもある。

 これらは判定ルールから派生するルール群であって、いろいろなTRPGを見ると、「常識で判断」とか「適切と思える範囲で」と書かれていることもある。つまり、「このTRPGでは、そこはあまり気にしない」というわけだ。

 というわけで、「判定ルール」と「そこから派生する各種ルール」および「PCやアイテムなどのデータの数値」が、とりあえず判定ルール面から見た「システム」の上限と考えていいだろう。

 「アイテムのデータ」というところで、「そのアイテムの名前や、その説明している部分はどうなのか」という疑問もあるかもしれない。たとえばとして、拳銃が与えるダメージが5としよう。また、弓が与えるダメージも5としよう。両方とも、ほぼ直線で飛んでいくものがダメージを与えるという点と、ダメージが5という点は同じだ。あとはフレーバーということになる。フレーバーを除けは、同一のものと考えていいことは了解してもらえるだろう。

 この「フレーバー」から「世界観」が、上記のシステムとは別の、TRPGを構成する要素になる。アイテムの名前そのものも世界観の一部ではあるだろうから、ひとまとめに「世界観」としてしまっていいだろう。


 というわけで、TRPGは「システム」と「世界観」からなる。なお、「世界設定」は、おおむね「アイテムの名前とデータ」が該当する。同時に、スキルの名前と影響も、「世界設定」に該当する。「世界観」をどう再現するかは、この「世界設定」が該当する。


 たんに「システム」と言った場合、現在の通例では、「特定のTRPGのルールブックに記載されている一式」を指すようだが、オリジナルのTRPGというか同人TRPGを作る人は、そのような呼び方に違和感がある人もいるだろう。それは、「判定ルール」から「特定のルールブックに記載されている一式」までを「システム」と呼ぶことによる違和感ではないかと思う。つまり、「システム」と言われたときに、いったいなにを指してそう呼んでいるのかがわからないからだ。

 この点は、TRPGを遊ぶ人は、すこしばかり意識してもいい事柄ではないかと思う。

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