TRPGを遊ぼう

宮沢弘

プレイヤー編

第1話: ロールプレイってなに?

 テーブル・トーク・ロール・プレイング・ゲーム、あるいはテーブル・トップ・ロール・プレイング・ゲームがTRPGと略記されるゲームです。どちらの場合も、あるいは別の呼び方もありますが、「ロール・プレイ」が重要であることは名前からもはっきりとしています。では、「ロール・プレイ」とはどういう行為を指しているのでしょうか?

 その説明は聖典とも言える二冊の本を読むのがいいのですが、今回はそれは置いておきます。


 ロール・プレイとは、次のように定義できます:

キャラクターのクラス、ジョブ、またはその他、さらにはどのような技能が高くどのような技能が低いかなどによって示される、そのキャラクターに期待される役割を果たすこと。


 つまり、「ロール・プレイ」および「そのキャラクターらしさ」とは、期待される役割を果たすこと自体です。


 ここで、「期待される役割を果たすことだけがキャラクターらしさなのか?」と、ちょっと納得できないという人もいるかもしれません。ですが、それが「ロール・プレイ」です。

 納得できないという場合、その理由は、「ロール・プレイとキャラ・プレイの区別ができていないこと」によることが多いかと思います。


 TRPGについての説明では、「キャラクターを演じること」という文言をよく目にするかもしれません。ここで、「キャラクターを演じることという文言を読み違えている」と言えてしまうのなら話は簡単なのですが、残念ながらそう言い切ることはできません。というのも、プロのTRPG制作者も、「キャラクターを演じること」に別の意味を含ませていることが多いからです。

 「キャラクターの背景から、そのキャラクターはどのように行動するか」という指針が昔からあります。ですが、これは上記の「技能の高低によって」と同じ段階に存在する指針です。この意味において「そのキャラクターらしさ」を追求することもまた、「期待される役割を果たすこと」と同じ段階に存在する指針です。あるいは、「技能の高低」などに関連した理由付けとも言えます。では、何が「納得できない」ことの根底にあるのでしょうか? それは、上記の定義ではキャラ・プレイが容認されていないことが大きいのではないかと思います。

 では、「キャラ・プレイ」とはどういうものでしょうか? それは、上記のロール・プレイの定義に含まれない設定を重視することと言えるでしょう。簡単に説明すれば、いわゆる版権キャラとして、上記のロール・プレイの定義に含まれない元ネタのキャラクターの性格を持ち込むことだったり、いわゆる持ちキャラとして、上記のロール・プレイの定義に含まれない持ちキャラの性格を持ち込むことが挙げられます。

 つまり、「キャラクターを演じること」という言葉の「演じる」に過剰な重みを置くことが「キャラ・プレイ」と言えます。プロによる説明でも、「演じる」に過剰な重みを置いていることが少なくありません。広く見れば、「このTRPGは、こういうことをできるように設計している」と書いてあったり、「だけど、システム面の制限はあるからな!」と書いてあったり、「できるだけ広く対応しようとはしているんだけどね」と書いてあったりしますが。


 TRPGはインプロ演劇の要素もたしかにあります。しかし、同時にインプロ演劇と同様に縛りもあります。TRPGのキャラクターにおいては、その縛りとは上記のロール・プレイの定義によって示されるものです。

 「上記のロール・プレイの定義では、キャラクターはただのゲームの駒でしかないのではないか?」と思われるかもしれません。もちろん、そのとおりです。キャラクターとは、プレイヤーがゲーム内世界に入るための駒です。それ以上でも以下でもありません。

 「キャラ・プレイの要素が強い方が楽しい」という意見もあるでしょうし、そういう方針で遊んでいるグループやサークルもあるでしょう。すでに廃れ気味かもしれませんが、なろうやその他でVRMMOものが流行った理由には「自分自身を演じるキャラ・プレイであった」という側面もあったのではないかと思います。まぁ、自分自身とは言っても、創作内での話ですが。

 それでゲームが成立しているのなら、別段とやかく言うことでもありません。しかし、どのような認識であるにしても、TRPGのシステム面においては再現できることとできないと、もしくは再現が難しいことがあります。キャラ・プレイの場合、システム面において再現できないことを持ち込もうとすることになります。それは、キャラ・プレイでうまく遊べているように思えていても、実のところはシステム面においてそのTRPGを崩壊させているのだという認識が必要でしょう。

 上記のロール・プレイの定義においては、どのようなTRPGにおいてもシステム面で崩壊することはありません。システム面において定義されていることがらに従っているのですから、あたりまえのことです。


 では、システム面においてそのTRPGを崩壊させかねないキャラ・プレイをしたい場合にはどうしたらいいでしょう? 答えはたった一つです。そのキャラクターの特徴などを再現できるTRPGを探し、そのTRPGを遊ぶことです。

 TRPGのシステムは、広く思われているかもしれない程には柔軟ではありません。システムのパーツとなるルールやデータ、そしてルールやデータ間の関係はかなり微妙な線で成立しています。柔軟に思えるのは、「GMの裁量によっている」のだと理解する必要があります。


 皆さんはTRPGでどのようにロール・プレイをしていますか? ちょっと振り返ってみるのもいいのではないかと思います。

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