10-4
「はぁ……また牢かよ」
アーズラッドが漏らす。
「大丈夫。ちゃんと確かめてくれれば解放されるよ」
「だといいけど」
僕は、カラドセラに行くときに、通報書を持った商業協会の人と一緒に来た。リアカーに彼らを乗せ空を飛んで来たんだ。あり得ない事に、商業協会の人は驚いていた。その人は、トミロロイドの領主にフロラドルさんからの書状と共に手渡しているはず。
ちゃんと手配をしてくれれば、レゴアドとラミュラン、そしてアラーダルダを捕まえてくれるはずだ。
次の日僕達は、牢から出された。と言っても解放された訳ではなく、査問会を行うらしい。
僕達は、両手を前で縛られた。
勿論、ナイフや剣なども没収。
査問会を開く場所は、イスだけがある部屋だった。
そこには、ラミュランと昨日捕らえられたレゴアドさんが僕達と同じく腕を縛られていた。僕達が入ると、二人はギロリと睨んだ。
よかった。ちゃんと捕らえてくれている。
領主だと思われる人がもう席に座っていた。
その領主とラミュラン達と僕達は、三か所に分かれて座る。いわば三角形の角に座って向き合っている感じ。
『凄いわね。それぞれに結界が張られているわ』
冒険者協会の制服を着た人がそれぞれの場所にいる。もしかしたらその人が張っているのかも。
『こっちとラミュラン達の方は、魔法を封じるシールドね』
「え? ラス大丈夫なの?」
ボソッと返す。
『大丈夫よ。能力は私の方が上だから。チェック』
********************************
シールド【ランク:S】
発動者:アーゼラグ
耐久度:100%
【状態:封印】
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『領主の方は、ダメージ吸収の様ね』
なるほど。
「お待たせしました」
「あの人って……」
アーズラッドが、入って来た人物を見て呟いた。僕達は、顔を見合わせた。
バイガドさんとあの時の魔導士だ。ラスの声が聞こえる様にしてくれた人。僕としては、もう一人の恩人だ。でもバイガドさん達は、王国騎士団ではなかったっけ?
ラミュラン達も驚いている。
二人は、領主の後ろに立った。
「さて待たせたな。これから王国騎士団立ち合いの元、査問会を開く」
そう領主が述べた。
書状を見てから呼び寄せたとしたら凄い速さで来た事になるんだけど?
一日で来れるものなのかな?
「さて昨日、ある領主から書状が届いた。まだ組織の全貌を把握していないが、しっぽを掴んだとな」
そう言ってラミュラン達を領主は見た。
「ラミュラン。君が持っていた剣とレゴアドの剣を鑑定させてもらった。追尾の剣と認証の剣だった」
それを聞いたラミュランは、僕を睨んだ。僕が少なくても認証の剣の事を知っていると思ったからだ。
「この製作者アラーダルダとは誰だ?」
「存じ上げません」
領主の問いにラミュランはそう返す。
「そうか。では、レゴアドについている奴隷リングについて聞こう」
「知りません」
『このままだとまずいかも』
「え? なんで?」
『彼にもついているのよリングが。チェック』
********************************
マジカルリング【奴隷リング:SSランク】
【キーワード:アラーダルダ】
【製作者:アラーダルダ】
魔法:ヒール
【意思度:100%】
【キーワド発声:業火】
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あの業火って何? 僕は、チラッとラスを見た。
『彼がアラーダルダと言う言葉を発するとたぶん、あのリングから炎が出て来るのでしょうね。周りは火の海よ』
「え!?」
僕が驚きの声を上げたので、皆が振り返った。
『彼も従わらせられていたって事ね。意思度は100%だけど、あれがある限りどうにもならないわね』
「アラー……」
ラミュランが突然倒れた! いや僕が眠らせてと言う前に、ラスが眠らせてくれたみたい。
周りは騒然となった。
「眠らされた様です」
調べた魔導士がそう言うと、全員が僕を見た。
それを出来るのが、僕、いや妖精のラスしかいないと思ったからだ。
「なぜ眠らせた?」
領主が聞いて来た。
なんて答えたらいいの?
『そうねぇ。レンズを使ってもらいましょうか』
レンズって鍾乳石で作らされた5センチ角の四角いレンズかな?
「作って来たレンズの事?」
『そうよ。今からそれに加護を与えるわ』
「え? 今?」
『鑑定師によっては、自分よりランクが高いモノは鑑定不可と判定される事があるの。だからワザと付けずにいたのよ』
そういう事もあるのか。
鞄は取り上げられていない。万能薬は取り上げられたけどね。レンズは鞄の中だ。
「い、今からどうしてかを見せますからちょっと待ってください」
僕が鞄からレンズを出そうとすると取り押さえられた。
「え? あの……」
「まず、何をするか聞こうか」
そう言ったのは、領主ではなくバイガドさんだ。
「ラミュランのリングを鑑定して見せようかと思います」
「報告では、彼のだけ普通のリングだと報告を受けたが?」
「これは!」
「どうした? ニュガーマス」
そう言いながらバイガドさんが、ラミュランの横にいる彼に振り返った。
「はい。どうやらこれも奴隷リングの様です。ランクは、SS。だったら私以外見破れない。どうやらアラーダルダという者は、SランクではなくSSランクの様ですね。少なくてもこの国には存在しない人物です」
『あらあの人、SSランクの様ね』
「だな。それだけの物が作れるのなら名が知れている。名を変えている可能性もあるな」
「はい。隠れて活動しているのでしょう」
「そのリング、外せそうか?」
「トラップがあるかもしれないので、不用意に外すのは危険かと思われます。ですので、ここでは無理ですね」
「そうか。では二人は厳重警備で、特にラミュランはずっと眠らせておくようにしよう」
「ところでバイガドさん。彼らはどうしましょう?」
と領主が言うとバイガドさんが、僕達の方に向き返った。
「君達の事は、報告を受けている。二人を捕らえるご協力に感謝する」
「え? それって俺達の事を信じてくれるという事?」
「あぁ。ツエルという者も生きていると報告を受けているからな」
「え!?」
どういう事? なんで知っているの?
「そうか、君達は知らないのか。王が速やかに伝達出来るように、領主とはマジカルアイテムで連絡が取れる様になっている。それで死んだと言われていたツエルも捕らえたと連絡が来て、彼らが所属していた元シャドウを調べろと、陛下からお達しが出て我々はこのカラドセラに向かっていたんだ」
『やられたわね。先にもう手を打ってあったのね。ツエルを捕まえて話を聞いて、あなたの兄だと確信した。証言はとれていないので、それは言わずにいたけどシャドウが怪しいと睨んだので通報したのでしょう』
「え……」
『ここの領主には、陛下から連絡も来ていたしフロラドルからも書状が届いた。だから二人を捕まえておいた』
え? じゃ? 本当は、こんな事をしなくても解決したの?
「先ほど、映像を見せてもらった」
バイガドさんが言った。
僕達の作戦は、レゴアドに一連の事を暴露させる事だった。
フロラドルさんは、アーズラッドに小型ランタン型のマジカルレコードを持たせた。これは中の水晶に映像を保存できる凄いモノだった。
僕に持たせると警戒させると、アーズラッドに持たせたんだ。
彼らは、僕が妖精の加護を使って錬金術のような事が出来ると思っていたからそう言うのを持っていると警戒させるだろうと。
そのマジカルレコードも取り上げられたんだけど、それをバイガドさん達が見たらしい。見てと言う前に見たという事は、その事もすでに書いて送っていたって事だよね?
『あなたをここへ向かわせるのは、陛下に連絡を入れた時から計画にあったようね』
やっぱり……。
「あの、じゃ三人の容疑は晴れたのでしょうか?」
「あぁ。だけど、ツエルには尋問に伺う。彼の処遇についてはそれからだ。そういう連絡が領主に行っているはずだ」
「え!?」
お兄ちゃんの待遇も決まっていたなんて……。
「って、じゃあの大金はたいた意味ないんじゃないか!?」
アーズラッドが言うけど、今更だよね。
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