10-3
「君は確か、アーズラッドと一緒にいた……」
白々しいな……。
「スラゼです。協力をお願いしたいんです」
僕は、冒険者協会を通してレゴアドを呼び出した。彼は元、シャドウのメンバーで今はブラックのマスターだ。あのラミュランと一緒に居たごつい人だ。
「お願いだと?」
「はい。アーズラッドの居場所を教えて欲しいんです」
「居場所だと?」
「聞きました。アーズラッドが僕のクラウンのメンバーと一緒に森へ入ったって。そしてそのアーズラッドは、ツエルさんと出掛けたと。でもそのツエルさんは……」
「ちょっと場所を変えようか」
そう言ったレゴアドの後ろを頷いてついて行く。大丈夫。冒険者協会を通したのだからすぐには殺されない。
連れて行かれたのは、レゴアドが泊まっていた宿だった。
「あの……アーズラッドですけど」
「彼は、二人を間接的に殺した」
「間接的って! 本当にアーズラッドが火をつけたと?」
「命令して少女につけさせた」
「違う! サツナはそんな事をしない!」
「逆に聞こう。その彼女達はどこにいる?」
本当に行方は知らないんだ。
フロラドル領で捕まったけど、それを発表していないと言っていた。
「匿えば、君も仲間だと思われる!」
「だからそんな事しないよ! 何の目的があって森に火をつけるって言うの?」
「あいつは、ツエルが連れて来た奴だ。ツエルもお人好しで困る。前に入っていたクラウンはとんでもないところだったらしく、実力もないのにDランクになっていて、使えないやつだった。多分そいつらに出くわしたのではないか?」
「でも、ツエルさんと一緒に出掛けたって聞いたんですけど? だとしたらおかしくないですか? ツエルさんの姿は見られていない。それを言ったのは元シャドウの人らしいのです。なので元シャドウの人達に会わせてもらえませんか?」
「なるほど。そっちが狙いか? しかしなぜ、それを俺に言う」
「僕が知っている元シャドウの人は、あなただけですから」
トントントン。
ドアがノックされ、レゴアドはバッとドアに振り返った。
「レゴアドさん、お客様がお見えです」
宿の人だ。
レゴアドさんは、はいとドアを開け驚いた顔をした。
「お前……」
「お話があるんですけど、入ってもいいですか?」
「あぁ……」
宿屋の者がいる手前、騒ぎを大きくするのは得策ではないと思い部屋に入れたみたい。
「つけていたのか?」
「まさか。だったらレゴアドさんだって気付くでしょう」
招き入れた相手、アーズラッドがそう答えた。
「何しに来た? 火をつけましたと言いに来た訳でもあるまい」
「俺を嵌めた奴を教えてもらおうと思って。俺は、ツエルさんと一緒に出掛けてない。追われていたんだ」
「追われていた? 何をしたんだ?」
「俺は別に何も。だって追われていたのは、スラゼだったから」
アーズラッドは、僕を見た。
「ほう。だったら君が火をつけたのか?」
「カリルを殺したのも火を放ったのも僕じゃありません。レゴアドさんもそれ知ってますよね?」
レゴアドから笑みが消えた。
「見ていたのか……」
「そう。僕は隠れて見ていたんだ。ラミュランに背中を刺されカリルは殺された」
本当に見ていたのだと確信したレゴアドさんが、剣抜いて襲ってきた!
嘘!?
「50%」
僕も剣を抜き、その剣をはじき返した。
「ま、まじかよ……」
アーズラッドが震えた声で言う。
僕もびっくりした。まさか、襲って来るなんて!
『やっぱりそうなるのね。見た者を殺さないとラミュランが火をつけた事もカリルに手を下した事もばれちゃうからね』
「それが答え? 事実だと言う?」
僕が問うと、レゴアドは僕をぎろりと睨んだ。
お兄ちゃんとは全然違う。
レゴアドにもお兄ちゃんと同じく左腕にリングがあった。アーズラッドの話によると、シャドウ設立の時にメンバーに渡された事になっている。
つまりあれは、奴隷リング。
でもどうしてこうも違うの?
これってどう見てもリングに操られている様に見えないんだけど。
「お前バカだな。逃げ切ったのに。殺されに来るなんてな」
「今、ここで僕達を殺せば、確実にあなたが捕まるけど?」
「そんなヘマはしない。彼が来てくれたからね。何とでもなる」
レゴアドは、チラッとアーズラッドを見た。
『アーズラッドが襲ってきたとでもする気かしら?』
「なんでだよ! なんで殺したんだ!」
アーズラッドもあの場面は見ていた。けど声は聞こえていない。だからどうして殺されたかは知らないんだ。
「あぁ。そっか。知らないのか。だったら教えてやるよ。ツエル共々スラゼを殺すハズったのが、スラゼを逃がしただけではなく、ツエルを自分で始末もしていなかった。彼を殺したのは、目の前にいるスラゼだ。ツエルが死んでいるのをこの目でみたからな。そして、そうカリルが言ったのもこの耳で聞いた。つまりツエルを殺したのは、そこのスラゼなんだよ!」
レゴアドは叫んだ。
「え? 火をつけたのは何でだよ!」
アーズラッドは、一瞬どういう事と僕を見るもまた問う。
「ふん。それは知らないな。火などつけていない」
火をつけた事は語らないか!
「何を言っているんだ! 火をつけ……」
黙って聞いていたレゴアドが、仕掛けてきた。
それを必死に防ぐ。って、全部ラスがしてくれているけどね。それでもメチャ怖い。お兄ちゃんの比じゃないぐらい素早い!
「ふん。なるほどな。これが妖精の加護の力か。剣術もお手の物ってか?」
そう言った途端、レゴアドはアーズラッドに向かう。
「わぁ!」
べちん!
アーズラッドは、僕の方へ逃れる事が出来た。
紅葉が、アーズラッドの鞄から出て来て、レゴアドの顔に張り付いたんだ!
「あぶね……」
アーズラッドが安堵と共に呟く。
ぺたん。
紅葉を剥そうとしたレゴアドの手から逃れ、僕の頭へと着陸した。
「な、なんだ!?」
驚いた顔を僕達に向けた。
「なるほど。召喚していたって事か」
うん? 紅葉を僕が召喚したと思ってるのか。
「え? そうなのか?」
って、アーズラッドも驚いている。
モンスターのペットだと思っていたとは思うけど、どうして居るのかは聞かれていないから話していない。
「紅葉は仲間」
僕はそう返すだけにした。
「なるほど。主の場所へとアーズラッドを案内したわけか」
主ではないけど合っている。紅葉が僕の居場所をアーズラッドに教えたんだ。
『それにしても意思度が違うとこうも違うのね。見て。チェック』
********************************
マジカルリング【奴隷リング:Sランク】
【主者:ラミュラン】
制限:レゴアド【デトラ】
【製作者:アラーダルダ】
魔法:ヒール
【意思度:10%】
【束縛/自死不可】
********************************
意思度10%?
『たぶん洗脳に近いんだと思う。ラミュランに従うのは当たり前。彼を助けるのは当たり前なのでしょうね。これ以上問いただしても無駄の様ね。作戦通り寝かせましょう』
ラスがそう言った途端レゴアドは、ばたんと倒れた。
「うお。マジで一瞬で眠らせた! 妖精ってすげぇ……」
最終的には眠らせて確保する事になっていたが、アーズラッドは驚いた。
僕もここまで出来ちゃう事にちょっと、怖さを感じるけどね。
アーズラッドと一緒にレゴアドの腕を後ろで縛り束縛する。
『やっぱりこの剣も一緒ね。チェック』
********************************
ロングソード【認証の剣:Sランク】
【ターゲット:デトラ】
【製作者:アラーダルダ】
********************************
「よかった。これで一応証拠が揃ったね」
「なあ、俺、また捕まったりしないよな?」
「もしかしたら一瞬捕まるかもだけど……」
「え!?」
「いや、わかんないけど。取りあえず、僕は一旦外へ出るね」
「うん。宜しく頼むな」
僕は部屋を出て、宿屋のカウンターへ向かった。
「あの護衛団を呼んで頂けませんか? 悪い奴を捕まえました」
「え?」
宿屋の人は驚いていた。部屋を覗きに来てその悪い奴がレゴアドだと知ると更に驚いた。
一応呼んでくれたけど、僕達も一緒に捕まった……。
束縛はされなかったけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます