2-4
暫くすると宿屋を発見。リアカーは見えない様にラスにしてもらい、受付をするのに中に入った。
「いらっしゃい」
女将さんみたいな人が、カウンターにいた。
すごーいと、二人は目を輝かせて建物内を見渡している。
「あの三名なんですけど……。あ、僕達冒険者で、二人は十五歳未満です」
僕達は、冒険者カードを提示した。二人には、十五歳未満のマークがついていた。
「おや、兄弟で冒険者かい? だったら三人で一つ部屋でも大丈夫かな?」
「「うん。スラゼお兄ちゃんと一緒がいい!」」
と二人揃って答えた。
「安くあげるのに、二人部屋にするかい? 一人分おまけしてあげるよ」
「いいんですか?」
「いいとも。君達は、あれだろう? 施設の子――」
ボソッと女将さんが言った。噂になってるんだやっぱり。
「ありがとうございます」
部屋は、ベッドが二つだけとシンプルだけど寝るだけだから問題ない。でも宿泊って思ったより高かった。
通常料金は、一泊朝食付きで銅貨500枚。十五歳未満は、銅貨300枚だった。今回銅貨800枚で、三人分の朝食付きだ。
アーズラッドが言った通りだった。
食べ物の確保をしたいから、寝るのは野外にするしかないかも。
「わーい。ベッドだぁ!!」
二人は、ベッドの上に乗って喜んでいる。
僕も嬉しい。施設に来る前はベッドで寝ていたと思うんだけど、ベッドがあった記憶はあるけど寝た記憶はないんだよね。
だから初体験な気持ち。
今までは、ほぼ一日一食だった。だから食べなくてもいいけど、ご飯どうしようかな?
「ねえ、ご飯どうする?」
「お腹すいたかも……」
レンカが食べたいかもという顔をした。サツナも頷く。
そうだよね。今までだってお腹がすいていなかったわけじゃないもんね。昼も食べてないし……。
「じゃ、食べに行ってみようか? 今回だけ特別に!」
「え? お店屋さんで食べるの?」
「やったぁ!」
レンカとサツナは大喜び。
施設でそんな事した事なかったもんね。僕もないからドキドキする。
宿屋の一階にある食堂で僕達は、食べる事にした。
「あのさ、ラス……僕こういう所で食べた事ないんだけど、どうしたらいいの?」
『え!? もう仕方ないわね。これも経験よ。その時々によるけど、ここは注文してそれがテーブルに運ばれてくるからそれを食べ終わったらお金を払うのよ』
「ありがとう」
二人の手前、何も知りませんって訳にはいかないからね。
「えっとね、これから食べたい物を選んで注文するの」
「え? これから? うーん。これって何?」
レンカが指差したものは、ガイガイ鳥と薬草のソテーだった。
ソテーってなんだろう? ガイガイ鳥ってモンスターだったような気がするんだけど……。それと薬草なの??
「えーと……」
「決まったかい?」
「え? あ、じゃ……これ」
「ガイガイ鳥と薬草のソテーね。他には? 量的にはもう一品ぐらいあった方がいいと思うけどね?」
「えっと……じゃ、お、お任せで」
「じゃ、特製雑炊でいいかい?」
「はい。それでお願いします」
緊張した~。
「雑炊って何?」
「え? あ~……」
『穀物を煮込んだものよ』
「穀物を煮込んだものよだよ」
「すごい! 初めて食べるね!」
「うん!」
レンカが言うとサツナが大きく頷いた。
ラスのお蔭で、僕のメンツが保たれた。
「ありがとう、ラス」
『よく考えたらあなた達、そう言うの食べた事ないどころか、見た事もなかったわね』
そうだから、僕も凄く楽しみだ。
取り皿を置いてから暫くすると、注文した食べ物がテーブルの上に置かれた。
ガイガイ鳥のお肉の塊の横に薬草が添えてある。それをナイフで切って三等分して皿に分けて、雑炊も深めの皿に分けた。
雑炊は、アツアツで少し冷まさないと食べれないかも。
「わぁ……おいしい!」
レンカが肉を頬張り満足顔だ。
サツナは、雑炊をスプーンですくい、ふーふーと冷ましている。
僕も肉を頬張る。肉汁が出て来て程よい弾力があるお肉。
ガイガイ鳥を見つけたらラスに調理してもらおうかな……。
雑炊も一口食べてみた。――これって、食べた事あるかも。微かな記憶。きっと、お母さんが作ってくれた事があったんだ。
「スラゼお兄ちゃん、どうしたの? 熱かった?」
「え?」
レンカに言われて気がついた。僕の瞳からは、涙があふれていた。
「か、感動しただけ! お、おいしいね」
「「うん!」」
二人は、声を揃えて返事をした。
夕飯代は、銅貨250枚だった。
部屋に戻った僕達は、ベッドに潜り込んだ。僕が一人で一つ使い、もう一つを二人で使う。初めは騒いでいた二人だけど、すーすーと二人の寝息が聞こえて来た。
二人が居てよかった。寂しくない。今まで大人数だったからね。僕は、面倒をみるより、みてもらう方だったけど。
僕は、備え付けのランプの火を消した。
「おやすみ」
ベッドも何となく懐かしい気がした。
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