3-1 二人のお願い
「色々お世話になりました」
「いやぁ。リアカー引いている冒険者なんて初めてみたよ。気を付けておいきよ。これ、ちゃんと張っておくからね」
「お願いします」
「「バイバイ」」
朝食を食べ終わった僕は、どうせだからとチラシを張ってもらう事にして一枚渡した。
レンカとサツナをリアカーに乗せ、朝早く出発した。
親切な人だったなぁ。領土を出てチラシを配ると言うと、地図をくれた。しかもこれ、宿屋協会が発行している宿屋の人が持っている地図。昨年のだけどとくれたんだ。
地図といっても冊子になっていて、領地ごとに協会に入会している宿屋が記されている。なんていいものをくれたんだ。これなら全個所を周れるかもしれない。
「これがあったら全部周れそうだよね」
『全部は無理でしょうね』
「え? なんで?」
『一年では、周れないって事よ』
「あ、そっか!!」
徒歩では確かに無理かも。だったらルートを決めないとな。
あ、そういえば、ホロつけたいから何かシート買っておこうかな。
「ねえ、二人共雑貨屋によっていい?」
「雑貨屋?」
「これに屋根を付けようかと思って」
「「屋根!?」」
って、二人は驚いた後大喜びした。
『どこまで改造する気なのかしら……』
「最初提案したのはラスだよね?」
『まあいいわ。夜はそこで寝れる様に考えましょう』
「じゃ、雑貨屋に行こう」
□
リヤカーは、ラスに見えないようにしてもらって、僕達は建物の中で買い物をする為に入った。
ここは普通の雑貨屋さんらしい。
冒険者ではない人達が、普通に買い物をしている。
「かわいいね」
「うん」
二人が何かを見ていると覗くと、髪を留めるピンだ。
「別に買ってもいいんだよ」
「「いいの?」」
「うん。でも考えて買わないとお金なくなっちゃうからね」
「はい!」
二人は嬉しそうに選んでいる。贅沢っていうわけでもないが、今まで出来なかった事だ。
『あなたは何か、欲しい物はないの?』
「うーん。特には。ラスにもらったしね」
『あんなのでいいの?』
あんなのって。高価な物に変えてくれたんだよね?
「僕の宝物だよ」
『大事にしてくれるのね、ありがとう』
ラスは嬉しそうだ。
そうだ。ラスにも何か買ってあげたいけど、実態がないから買ってもムリなのかな?
「ラスは、何かほしいものないの?」
『え? 私!? あなた変わってるわね。妖精に買い与えようなんて』
「え? そう? お礼がしたいなぁって。でもここに売っている物はあげられないんだよね?」
『まあね。気持ちだけ受け取っておくわ。ありがとう』
やっぱり、物体じゃ無理か。でも命令とはいえ、命の恩人だしなぁ。何か方法を見つけて、元の世界に帰る前に恩返しができたらいいなぁ。
と、そうだった。シートを買いにきたんだった。
当たり前だけど、きれいなシートだ。施設にあったのはどれもよれよれだったからなぁ。
あ、透明なシートもある。雨の日に、僕の方にもつけたいなって思っていたからこれも欲しいけど、透明って他のと比べて高いんだね。
うん? 半値のシートがある。しかも大量に?? 何故だろう?
「あの、すみません。なぜあれだけ半値なんですか?」
「あれかい? どうやら色あせてしまった様に見える色みたいでね。売れ筋悪かったやつなんだよ。新商品がでるから売り切る為に半値なんだよ。もしかして買うかい? 買うなら何かおまけするから全部どうだい?」
「え? 全部? そ、それはさすがに……」
「場所を取ってね。買うなら全部売ってしまいたいんだよ」
気持ちはわかるけど……。そんなにあってもなぁ……。
『たくさんあってもリアカーには乗せられるわよ。安いのなら買っておいたら?』
「え?」
そうえいば、チラシもそうだったけど凄い収納になってるよね。
だったら。
「あの、だったらこのシートも半値にしてくれますか?」
そう交渉を持ちかけると、っぷっと笑い出した。
「え……僕変な事いいました? あ、無理ですよね……」
「いやそうではなくてね。普通ならそれをおまけにしてって言うだろう。まさか半値でいいだなんてね」
そういうものだったのか!
「いいよ。半値にしてあげよう。それと、彼女達にこれなんてどうだい? 一個だけだけどね」
手に取ったのは、木製手鏡だ。鏡の後ろには、何か花の模様が掘ってある。
「わぁ。かわいいね」
レンカが手鏡を見て言った。
そういえば、手鏡なんてものなかったよな。
「わかりました。そうします」
「本当かい? いやぁ、悪いね。押し付けたみたいで。模様が何種類かあるから選ぶといいよ」
「「はーい」」
『みたいって、押し付けてるじゃん。もうお人好しなんだから』
「手鏡に惹かれたんだ」
僕はボソッとラスに返す。
それにしても色んな小物がある。ちょっと高めみたいだけど、模様も一つずつ違う。一点もの?
「これって一点ものの商品なんですか?」
『これかい。ハンドメイドさ。商業協会にハンドメイド部って言うのがあってね、そこに登録した人達のモノさ。まあ趣味で作った物を売っている感じかな』
「え? 趣味で? 凄いですね」
『スラゼもしてみたら? なんてね』
「あはは。ムリムリ」
「うん? 何がだい?」
「え? いえなんでも。あ、先にお会計を……」
「そうだね。ちょっとお待ちください」
あぁー。びっくりした。つい普通の声で返したちゃったよ。気をつけないとな。変な人だ。
「これ~!!」
ヒマワリが描かれた手鏡だった。そう言えば二人共、ヒマワリが好きだったっけ。
「いやぁ。ありがとうね」
お会計をすませ僕達は店を出た。
買ったシートをリアカーに積んだ。
二人は、リアカーに乗り込み買ったばかりの手鏡を二人で覗き込んでいる。
そうだ。ここにもチラシ貼ってもらおう。
「すみません。これ貼ってもらっていいですか?」
もう一度、店を訪ねお願いする。
「おやこれは。気が早いねぇ。わかった。貼っておくよ」
「ありがとうございます」
思ったけど、全部の地域を周れないなら、雑貨屋に貼るだけでもいいからって周るかな。
「あの~お伺いしますが、雑貨屋協会みたいなのがあって、それの地図みたいのってありますか?」
「え? これまたいきなりだね。商業協会に雑貨部って言うのがあってそれになるかな? うーん。地図はないけどリストはあるが、部外者にはねぇ。もしほしいならハンドメイド部に登録して売り手になれば、もらえると思うわよ」
「そうですか。親切にありがとうございます」
「気を付けておいきよ」
「はい」
よく考えればそうだよね。
でも売り手かぁ……。冒険者をやめてそういう商売もいいかも。って儲けってあるのかな?
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