2-3
『随分と目立つ旅たちになったわね……』
確かに目立つけど、大荷物だから助かるよ。
「うーん。でも凄くありがたいよ。リアカーなんて初めて触った」
『まあいいわ。それ引っ張るの大変でしょう? 軽くしてあげる』
「え? そんな事出来るの? って、かる!」
いきなり軽くなった。
『見せてあげるわ。チェック』
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ミニリアカー
【重量制限:なし】
耐久度:100%
【ミミミラスの加護:重量軽量化/容量無限大/シールド保護】
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「え? 何これ? 何したの?」
『私の加護を与えたのよ。わかりやすく言うと、私のモノよって事』
「え? これ返すんだけど?」
『きっと、返さなくていいってなると思うわよ。二人をそれに乗せるといいけど、座る場所がないわね。木の板でも買って、イス替わりにつけるといいわ。大工仕事なら得意でしょ?』
「うん。まあ……」
冒険者の仕事がない時は、建物の修理とか畑仕事をさせられていた。だからラスの言う通り、そう言うのは得意だ。
それにしても軽いなぁ。引っ張ってる気がしない。
「ねえ、私も引っ張りたい」
レンカが言った。
『後にしてもらった方がいいわ。彼女が軽々と引っ張ると変でしょう?』
「そうだね。後でね」
「うん」
「私も!!」
「じゃ、二人共後で宜しくね」
僕達は、午前中の内に出発して次の街へ向かった。たぶん領土を出るのは明日になるだろう。
□
テコテコと歩く事二時間、街を抜けて山道に出ていた。リアカーが軽いといってもずっと歩いているから疲れたな。
レンカとサツナも口数が少なくなった。さっきまでは二人で楽しく話しながら歩いていた。
「少し休もうか?」
「うん」
二人は、嬉しそうに頷く。水筒の水を僕達は飲んだ。生き返る~。
『うーん。ねえ、もうここでリアカー改造しちゃう? そうしたら二人を乗せられるでしょう』
「え? どうやって?」
『いい事ひらめいちゃった! リアカーを一時的に見えなくしておくわ。だから森で木を切りましょう』
って、ラスは言うけどのこぎりとか持ってない。どうするんだろう。
でももう少しスピードを上げて歩かないと、次の街に着く頃には真夜中だ。
「えっと……僕、森に行ってくるから二人はここに……」
「一緒に行く!」
サツナが言うとレンカも行くと頷いている。
僕がチラッとラスを見ると、いいわよと頷いた。
「じゃ一緒に行こう」
「わーい。何するの?」
嬉しそうにレンカが聞く。
「うーん。木を切る?」
「どうして?」
「リアカーに二人が座れる様に改造しようと思ってね」
「えぇ、凄い!」
「ありがとう!」
サツナとレンカが喜んだ。やっぱり疲れたんだな。
不安は残るけど、ラスがリアカーを見えなくしてくれたので道の端に置いて僕達は、森の中へと入った。
「で、どうやって作るの? あ、錬金術?」
『ナイフあるでしょう? それ出して』
「うん」
腰に下げているホルダーからナイフを取り出した。
『これに私の加護をつけてあげるわ』
「え? これにも?」
『はい。チェック』
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ナイフ【のこぎり代理可】
制限:スラゼ専用
耐久度:100%
【ミミミラスの加護:強度強化/シールド保護】
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「え? のこぎりとして使えるの?」
『そういう事。まずは木を切ってみて』
「うん……」
ナイフの刃を当ててスライドさせると、スーッと切れてナイフが入って行く。まるで柔らかいモノでも切っているみたいだ。
「凄い。何これ」
「凄いね。木を切ってる」
レンカが言うと、サツナもすご~いと拍手する。
僕はまず、ハンマーを作った。って、普通に木をT字に切り取っただけ。ハンマーと呼べるのかどうか。
『器用ね。じゃそれにも……チェック。見てみて』
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ハンマー
制限:スラゼ専用
耐久度:100%
【ミミミラスの加護:強度強化/シールド保護】
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わぁ。よくわかんないけど、強化されてる。
「ねえこのさっきからあるシールド保護ってどんなの?」
『それはね、劣化しないようになってるの。水に濡れても大丈夫よ』
あぁ、なるほど。加護って凄いなぁ。
ナイフとハンマーを使い僕は、ミニリアカーをちょっとだけ改造した。ナイフで木の板を作り、蓋をするようにかぶせた。そこが足を置ける場所で、それより高い後ろの方に、座る部分を付け背もたれになる部分もつけて、もし寝てしまってもひっくり返らない様にした。
釘は、木の枝をラスに強化してもらって代用し、ハンマーで打ち付けた。何でもありで凄い!
「すごーい」
「楽しいね!」
レンカとサツナは大喜びだ。
それにしても量的には蓋が出来ないくらいの紙があるはずなのに、なぜ蓋ができたんだろう?
この蓋は、アコーディオンの様にして、畳んで開くようにした。
それともう一つ、停止した時に地面と平行になる様に、足も付けた。後ろの真ん中に一つ。ハンドルと言うか引っ張る引手の両端に一つずつ。計三つ。普段は折りたためるようにした。
木でこんな事ができちゃうなんて、ラスって凄い。
「じゃ行くよ」
「「出発進行!」」
二人は元気よく言った。二人が乗っているのに重さは変わらず軽い。
できれば、ホロもつけたいな。
って、これって冒険者がやる事じゃない気がするけど楽しみだ。
『そうそう。言い忘れていたわ。あなたの水筒はスタミナ水筒になってるの』
「スタミナ水筒?」
僕は、歩きながらラスと話す。道を歩いている人はあまりいないので、変に思われないからよかった。
『チェック。見てみて』
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水筒【スタミナ剤】
制限:スラゼ専用
容量:100%
【ミミミラスの加護:疲労回復/筋力強化/解毒/シールド保護】
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なんか効果が色々ついているんだけど。解毒ってそんなのもつけてあるの?
「凄いね?」
『でしょう? 感謝してよね。解毒だけは他の人にも効くからね。使う事が無い事を願うけど』
「うん。そうだね。ありがとう」
ラスのお蔭で疲れずに歩く事ができた。だから思ったより早く街に到着。夜になる前に着けた。
「宿屋探さないと……」
「わーい。宿だって!」
レンカが喜ぶと、サツナも喜ぶ。宿になんて泊まった事ないもんね。街に着いて二人は、リアカーから降りて僕と並んで歩いている。
みんな僕達を振り向く事……まあ目立つよね。
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