2-3

 『随分と目立つ旅たちになったわね……』


 確かに目立つけど、大荷物だから助かるよ。


 「うーん。でも凄くありがたいよ。リアカーなんて初めて触った」


 『まあいいわ。それ引っ張るの大変でしょう? 軽くしてあげる』


 「え? そんな事出来るの? って、かる!」


 いきなり軽くなった。


 『見せてあげるわ。チェック』


******************************

 ミニリアカー

 【重量制限:なし】

 耐久度:100%

 【ミミミラスの加護:重量軽量化/容量無限大/シールド保護】

******************************


 「え? 何これ? 何したの?」


 『私の加護を与えたのよ。わかりやすく言うと、私のモノよって事』


 「え? これ返すんだけど?」


 『きっと、返さなくていいってなると思うわよ。二人をそれに乗せるといいけど、座る場所がないわね。木の板でも買って、イス替わりにつけるといいわ。大工仕事なら得意でしょ?』


 「うん。まあ……」


 冒険者の仕事がない時は、建物の修理とか畑仕事をさせられていた。だからラスの言う通り、そう言うのは得意だ。

 それにしても軽いなぁ。引っ張ってる気がしない。


 「ねえ、私も引っ張りたい」


 レンカが言った。


 『後にしてもらった方がいいわ。彼女が軽々と引っ張ると変でしょう?』


 「そうだね。後でね」


 「うん」


 「私も!!」


 「じゃ、二人共後で宜しくね」


 僕達は、午前中の内に出発して次の街へ向かった。たぶん領土を出るのは明日になるだろう。



 テコテコと歩く事二時間、街を抜けて山道に出ていた。リアカーが軽いといってもずっと歩いているから疲れたな。

 レンカとサツナも口数が少なくなった。さっきまでは二人で楽しく話しながら歩いていた。


 「少し休もうか?」


 「うん」


 二人は、嬉しそうに頷く。水筒の水を僕達は飲んだ。生き返る~。


 『うーん。ねえ、もうここでリアカー改造しちゃう? そうしたら二人を乗せられるでしょう』


 「え? どうやって?」


 『いい事ひらめいちゃった! リアカーを一時的に見えなくしておくわ。だから森で木を切りましょう』


 って、ラスは言うけどのこぎりとか持ってない。どうするんだろう。

 でももう少しスピードを上げて歩かないと、次の街に着く頃には真夜中だ。


 「えっと……僕、森に行ってくるから二人はここに……」


 「一緒に行く!」


 サツナが言うとレンカも行くと頷いている。

 僕がチラッとラスを見ると、いいわよと頷いた。


 「じゃ一緒に行こう」


 「わーい。何するの?」


 嬉しそうにレンカが聞く。


 「うーん。木を切る?」


 「どうして?」


 「リアカーに二人が座れる様に改造しようと思ってね」


 「えぇ、凄い!」


 「ありがとう!」


 サツナとレンカが喜んだ。やっぱり疲れたんだな。


 不安は残るけど、ラスがリアカーを見えなくしてくれたので道の端に置いて僕達は、森の中へと入った。


 「で、どうやって作るの? あ、錬金術?」


 『ナイフあるでしょう? それ出して』


 「うん」


 腰に下げているホルダーからナイフを取り出した。


 『これに私の加護をつけてあげるわ』


 「え? これにも?」


 『はい。チェック』


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 ナイフ【のこぎり代理可】

 制限:スラゼ専用

 耐久度:100%

 【ミミミラスの加護:強度強化/シールド保護】

******************************


 「え? のこぎりとして使えるの?」


 『そういう事。まずは木を切ってみて』


 「うん……」


 ナイフの刃を当ててスライドさせると、スーッと切れてナイフが入って行く。まるで柔らかいモノでも切っているみたいだ。


 「凄い。何これ」


 「凄いね。木を切ってる」


 レンカが言うと、サツナもすご~いと拍手する。

 僕はまず、ハンマーを作った。って、普通に木をT字に切り取っただけ。ハンマーと呼べるのかどうか。


 『器用ね。じゃそれにも……チェック。見てみて』


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 ハンマー

 制限:スラゼ専用

 耐久度:100%

 【ミミミラスの加護:強度強化/シールド保護】

******************************


 わぁ。よくわかんないけど、強化されてる。


 「ねえこのさっきからあるシールド保護ってどんなの?」


 『それはね、劣化しないようになってるの。水に濡れても大丈夫よ』


 あぁ、なるほど。加護って凄いなぁ。

 ナイフとハンマーを使い僕は、ミニリアカーをちょっとだけ改造した。ナイフで木の板を作り、蓋をするようにかぶせた。そこが足を置ける場所で、それより高い後ろの方に、座る部分を付け背もたれになる部分もつけて、もし寝てしまってもひっくり返らない様にした。

 釘は、木の枝をラスに強化してもらって代用し、ハンマーで打ち付けた。何でもありで凄い!


 「すごーい」


 「楽しいね!」


 レンカとサツナは大喜びだ。

 それにしても量的には蓋が出来ないくらいの紙があるはずなのに、なぜ蓋ができたんだろう?

 この蓋は、アコーディオンの様にして、畳んで開くようにした。

 それともう一つ、停止した時に地面と平行になる様に、足も付けた。後ろの真ん中に一つ。ハンドルと言うか引っ張る引手の両端に一つずつ。計三つ。普段は折りたためるようにした。

 木でこんな事ができちゃうなんて、ラスって凄い。


 「じゃ行くよ」


 「「出発進行!」」


 二人は元気よく言った。二人が乗っているのに重さは変わらず軽い。

 できれば、ホロもつけたいな。

 って、これって冒険者がやる事じゃない気がするけど楽しみだ。


 『そうそう。言い忘れていたわ。あなたの水筒はスタミナ水筒になってるの』


 「スタミナ水筒?」


 僕は、歩きながらラスと話す。道を歩いている人はあまりいないので、変に思われないからよかった。


 『チェック。見てみて』


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 水筒【スタミナ剤】

 制限:スラゼ専用

 容量:100%

 【ミミミラスの加護:疲労回復/筋力強化/解毒/シールド保護】

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 なんか効果が色々ついているんだけど。解毒ってそんなのもつけてあるの?


 「凄いね?」


 『でしょう? 感謝してよね。解毒だけは他の人にも効くからね。使う事が無い事を願うけど』


 「うん。そうだね。ありがとう」


 ラスのお蔭で疲れずに歩く事ができた。だから思ったより早く街に到着。夜になる前に着けた。


 「宿屋探さないと……」


 「わーい。宿だって!」


 レンカが喜ぶと、サツナも喜ぶ。宿になんて泊まった事ないもんね。街に着いて二人は、リアカーから降りて僕と並んで歩いている。

 みんな僕達を振り向く事……まあ目立つよね。

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