模擬戦が終わった後

「また派手にやったな」


 模擬戦が終わり、レオが戦者から降りるとそこにリアが苦笑を浮かべながら話しかけてきた。


「本当にお前には驚かされる。前回の模擬戦では伝説の奥義であるサンダーボルトを使ってみせ、今回はそれに加えてあれだ」


 そう言ってリアが見上げたのは、先程までレオが乗っていて模擬戦の最中に外見が変化した戦者である。


「あー……。もしかして戦者が成長して外見が変わるのも珍しかったりする?」


「当然だ」


 レオの言葉にリアが断言する。


「戦者の成長というのは長い間戦い続け、いくつもの戦場を駆け抜けた歴戦の戦者のみに起こり得る現象だ。それ故に成長した戦者というのは、その戦者に乗る戦師の家の象徴であり誇りとなる。そして成長した戦者は通常の戦者よりもずっと性能が高く、それを引き継いだ戦師が軍に入隊すれば最初から高い地位につくことが多い」


(ええ~、何それ……? 戦者の成長ってそんなに大事なの? 俺の戦者、前世のは実戦どころか雷光破サンダーボルトの練習中に成長したし、今世のなんてルリイロカネから作ってすぐに成長したぞ?)


「へ、へぇ……。そうなんだ」


 レオが内心の動揺を隠して相づちを打つと、リアも彼の動揺に気付かずに頷く。


「そうだ。実際に皆も驚いているだろ?」


『『………』』


 リアに言われてレオが周りを見回すと、ルナを初めとする女学生達と女性の教官がレオの乗っていた戦者を見上げたまま固まっていて、そんな彼女達の姿がリアの言葉が正しかったことを証明していた。


「……それで? あの言葉は本当なのか?」


 レオが先程まで自分の乗っていた戦者を驚きの表情で見上げているルナ達を見ていると、そこにリアが話しかけてきた。


「あの言葉?」


「模擬戦の最後でお前がバイシャマンに言っていた言葉だ。私達がサンダーボルトを特別視しすぎていて、努力次第では私達でもサンダーボルトを習得できると言っていただろう?」


「ああ、あの時の言葉か」


 リアに言われてレオはバイシャマンとの模擬戦で自分が言った言葉を思いだし頷いてみせた。


「そうだ。確かに雷光破サンダーボルトは戦者の奥義だけど、戦者の動かし方より先に覚える基本技でもある。だから戦師だったら誰だって習得できるし、戦者がなくても使えることができる。……こんな風に、ね」


 レオがリアにそう言って右手を掲げてみせると、右手にまるで雷の閃きのような光が生じた。それは模擬戦で見た雷光破サンダーボルトの光と同じであった。


「……!? レ、レオ? その光は一体……?」


「これも雷光破サンダーボルトだよ。腕の立つ戦師だったら戦者の増幅がなくても雷光破サンダーボルトを使えるんだ。まあ、威力はかなり落ちるけどね」


「……どうやら、サンダーボルトを使えるってのは……本当のようだな……!」


 驚きに目を見開くリアにレオが答えると、そこに聞き覚えのある声が聞こえてきた。声の主は模擬戦でレオに敗れ、気絶していたはずのバイシャマンであった。


「バイシャマン? お前、もう起きて大丈夫なのか?」


 バイシャマンはなんとか立って歩けてはいるが、足元がふらついていて今にも倒れそうだった。心配したリアが声をかけるが、バイシャマンは彼女の声に気付くことなくレオの前にふらつきながら歩いていくと、勢いよく跪いて地面に両手をつけて口を開く。


「頼む! レオ……いいや、師匠! 俺に、サンダーボルトのやり方を教えてくれ!」


「……………はあっ!?」


 突然のバイシャマンの行動と言葉にレオは思わず驚きの声を上げた。

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轟雷戦技サンダーボルト 小狗丸 @0191

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