出来すぎた戦師
「それで……これからどうしようかな?」
模擬戦の相手である三体の戦者を吹き飛ばしたレオは、周囲を見回してから呟いた。
模擬戦の見学者達は、リアを初めとする全員が目を見開いてレオの乗る戦者を見上げるだけで微動だにせず、それは審判役の軍人も同様であった。審判役の軍人は固まったまま何の合図も出さず、三体の戦者は搭乗している戦師が気絶しているのか、地面に倒れたままぴくりとも動かない。
「……仕方がないな」
レオはこれ以上模擬戦は続けられないと判断すると、戦者に膝をつく体勢をとらせた後、操縦室から出た。レオが戦者から降りると、そこでようやくリアを初めとする模擬戦の見学者達が我に返り、全員が彼の元に駆け寄る。
一番最初にレオの元に辿り着いたのは、見学者の中で唯一の戦師で身体能力が高いリアであった。彼女は彼の両肩を掴むと、怒りや驚きが混じった表情となって叫んだ。
「レオッ!? おまっ! お前ぇ! 何なんだあれはぁっ!?」
「リア? 落ち着いてくれ。あれって何のことだ?」
興奮のあまり目を血走らせ、とても上流貴族のお嬢様とは思えない表情を浮かべるリアにレオは驚きつつも落ち着かせようとするのだが、彼女は興奮したまま話す。
「さっきの戦いだ! いきなりお前の戦者が光ったかと思えば次の瞬間には空を飛んでいて、どこからか光の弓矢を取り出したと思ったら一撃で三体の戦者を吹き飛ばした! 一体お前は何をしたんだ!?」
「何をって……
「…………………………はっ?」
何でもない様に言ったレオの言葉に、リアはそれまでの興奮がどこに行ったのかと思えるほどの呆けた表情になる。そしてそれは彼女に遅れてやって来た、他の模擬戦の見学者達も同様であった。
「………サンダーボルト、だと?」
「そう、
リアの呟くような声にレオは表情を特に変化させることなく答える。しかしその言葉の内容は彼女からすればとてと信じられるものではなかった。
この模擬戦が始まる前、リアはレオに、サンダーボルトは戦者の操縦を極めた選ばれた戦師にしか使えない伝説の奥義であると語った。これは彼女だけでなくこの国の、いや、この世界の常識であるのだ。
それなのに今リアの目の前にいるレオは、サンダーボルトを使った言うだけでなく、応用だの初歩だのと言った。この言葉が本当だとすれば、彼は伝説の奥義であるサンダーボルトを修得している上、それを使いこなしている事になる。
そんな事とてもではないが信じられないのだが、実際にレオの乗る戦者が今まで見たこともない動きと技で三体の戦者を瞬時に倒したのは事実だった。
『『………』』
気がつけばリアを初めとする模擬戦の見学者達全員が、信じられないものを見るような目でレオを見ていた。
「レオ……一体お前は何者だ?」
リアのその言葉はこの場にいる全員の気持ちだ。
突然何の前触れもなく現れた非常に希少な男の戦師。
その戦師はすでに自分だけの戦者を手に入れていて、今は引退したが優秀な女戦師として知られるシンハ・シィラの関係者。
そして伝説の奥義であるサンダーボルトを修得して使いこなしている。
あまりにも出来すぎていてリアが疑問をぶつけたくなるのも当然と言える。
「………」
だがレオはそんなリアの疑問に上手く答えることが出来ず、ただ曖昧な表情を浮かべることしかできなかった。
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