信じがたい結果
「いよいよ模擬戦か……」
自分の戦者に乗ったレオは、鉄の学び舎の訓練や軍の演習に利用されている平野に案内されると、戦者の操縦室の中で呟いた。するとそこで彼は、自分の手がほんの僅かだが震えていることに気づく。
「緊張……しているのかな?」
前世でレオはデスとしか戦った経験がなかった。人類を初めとするラナ・バラタ全ての生命が絶滅の危機に立たされていたデスとの戦いで、貴重な戦力である戦者を遊ばせておく時間などあるはずもなく、
だから戦者同士の模擬戦など今回が初めてで、緊張のあまり知らないうちに手が震えていた。しかしレオは手を強く握り締めることでその震えを打ち消した。
「大丈夫、俺ならきっと勝てるさ……。デスの大群と比べたら楽勝だ」
レオは前世でのデスとの戦いを思い出しながら自分に言い聞かせると、操縦室の壁が映し出す周囲の景色に視線を向ける。彼の乗る戦者の周りには、今回の模擬戦の為に来た軍の戦師が乗る戦者が三体、取り囲むように立っている。
戦者についてあまり詳しくない人間がこの状況を見れば「不公平だ」と言うかもしれないが、レオを含めたこの場にいる人間でその様な事を言う者はいなかった。
戦師と共に成長する兵器である戦者は、成長をして性能が向上する毎に外見が変化する。まず灰色だった機体に色がつき、その後は頭部が何らかの動物のものへと変わる。
つまり全身が光を反射して輝くような純白で頭部が獅子であるレオの戦者は、それを取り囲む素体の戦者三体とは比べ物にならないくらい高性能の戦者ということになる。そこから考えるとこの一対三という状況は決してレオの不利ではなく、むしろ彼の方が有利であった。
レオが緊張していた自分を落ち着かせて気持ちを戦いに向けると、審判役の軍人が模擬戦の合図を出す。
『『………!』』
審判役の合図と同時に三体の戦者がレオの乗る戦者に攻撃を仕掛けようとする。しかしレオはそれに動じる様子を見せることなく小さく呟いた。
「……
レオが呟くと彼の乗る戦者が全身に雷光を纏い、続いてレオの知覚速度が光の領域に至る。知覚速度が急激に上昇した瞬間、彼の視界に映る三体の戦者の動きが停止して、それを確認したレオは自分が乗る戦者を三体の戦者の上空へと跳躍させる。
空中でレオが戦者を振り返させて地上を見ると、三体の戦者は彼を見失い周囲を見回しており、その隙にレオの戦者は光の弓矢を作り出して狙いを定める。
「
『『………!?』』
レオの戦者が作り出した光の弓から放たれた光の矢は三本に分裂すると、それぞれ三体の灰色の巨人達の足元に着弾して大きな光の爆発を生み出した。三体の灰色の巨人達は光の爆発に吹き飛ばされ背中から地面に倒れると、そのまま動かなくなる。
そしてその様子を見てレオは思わず呟く。
「……嘘だろ? いくら何でも弱すぎるだろ? これがこの国でベテランの『戦師』だって? 数百年の間でどれだけ弱くなっているんだよ?」
現代の戦師と戦者が自分の知る前世より弱いというのは理解しているつもりだった。だが実際に戦ってみて、まさか一撃で全員倒れると思っていなかったレオは、困惑した表情で地面に倒れている三体の戦者を見る。
しかし困惑しているのはレオだけではなかった。
『『……………!?』』
リアを初めとする模擬戦の見学者達は全員、模擬戦の結果に目を限界まで見開き、伝説の奥義とされている
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