レオの決意

雷光破サンダーボルトに到達? どういうことだ?)


 雷光破サンダーボルトとはかつてこのラナ・バラタを襲った全ての生命の敵、デスを倒すことが出来る唯一の攻撃手段で、戦者とレオ達戦師は雷光破サンダーボルトを使うために作り出された。


 だから戦者を与えられた戦師は、まず戦者の操縦よりも先に雷光破サンダーボルトの使い方を教えられる。雷光破サンダーボルトさえ使えるのならば、例え満足に動けなくても砲台の代わりくらいにはなる。


 それがかつてレオが経験した前世の戦師の間の常識だった。しかし先程のリアの言い方はまるで……。


(まるで現代の戦師は雷光破サンダーボルトが使えないみたいじゃないか)


「……ねぇ? もしかして雷光破サンダーボルトが使える戦師って、珍しいの?」


「何を言っている? 当然だろうが」


 レオが今の会話で感じた疑問を確かめるためリアに質問すると、彼女は呆れたような表情となってそれを肯定した。


「いいか? サンダーボルトとは戦者が使える最大の奥義であり、それを修得した戦師は自国だけでなく他国にもその名を轟かせるだろう。しかしサンダーボルトを修得した戦師は世界中の長い歴史を見ても数人しかおらず、このサーラ王国では過去に二人しかサンダーボルトの使い手は現れていない」


(ええー? 何それぇ……?)


 リアの説明にレオは内心で呟いた。


 前世でも実力のある戦師は周囲から尊敬される存在であった。しかし現代では戦者を持つ戦師であるだけで尊敬され、雷光破サンダーボルトを使える時点で尊敬を通り越して「崇拝」の域にあるらしい。


 レオが前から薄々感じていた、前世と現代との戦者に対する認識の違いを改めて感じて戸惑っていると、リアが話しかける。


「何を変な顔をしている? これから予定があるから急いで案内を終わらせるぞ」


「予定? ああ、授業の予定か」


 リアの言葉にレオはそう考えた。鉄の学び舎の教室では現在生徒達が授業を受けており、途中から入学した自分は他の生徒達に少しでも追いつけるようにするべきだろう。


 しかしレオの予想にリアは首を横に振る。


「いいや。お前には戦者に乗っての模擬戦をしてもらう。それも相手は鉄の学び舎の教官ではなく、軍の戦師達だ」


「え? 何でいきなり戦者の模擬戦? しかも教官じゃなくて軍の戦師を相手に?」


「昨日あれだけ堂々と戦者で大通りを通ったからな。当然話は王宮にも届いている。戦者を作った戦師がこの国の貴族だと分かっていても、その実力を確めるべきだという話になった」


 レオの疑問にリアは当然だとばかりの表情で答えてから言葉を続ける。


「それにそんなに悪い話ではないぞ? 模擬戦でいいところを見せることが出来れば軍での評判も上がり、卒業後は出世もしやすくなるだろう」


「出世か……」


 レオがこの鉄の学び舎にやって来たのはラウマとシィラに言われたからだが、軍で出世して故郷の村の力になるためという理由もあった。模擬戦で良い成績を出せばその目的の近道となるというのならば、彼の答えは一つしかない。


「……分かった。出来る限りのことはやってみるよ」


「ほう? それでは模擬戦、楽しみにさせもらおうか?」


 レオがそう言うとリアは一瞬意外そうな顔をしたがすぐに楽しそうな、これからの模擬戦を期待する笑みを浮かべるのだった。

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