銀髪の少女との会話

(男が戦師になれる確率は千分の一!? 一体どうしてそんなことに……いや、待てよ?)


 銀髪の女性の言葉に驚いていたレオは、そこで前世で聞いたルリイロカネに関する知識を思い出す。


(そういえば……ルリイロカネって、体質が合わない人の体には定着せず効果を発揮しないって聞いたことがあるな。前世では体質が合わない人のためにルリイロカネを調整する技術があったけど、今の時代にそれがあるとは思えないし……。男の戦師が極端に少ない理由ってそれなのか?)


 男の戦師が少ない理由を考えていたレオだったが、そこで彼は一つの可能性に気づく。


(……アレ? ちょっと待って? 戦師の学生は鉄の学び舎で特別な教室に入れられるって義母さんに聞いたけど、もし入学したらそこでは俺しか男がいないんじゃないか?)


「おい、どうした? いきなり固まって?」


「えっ!? いえ、何でもないですよ?」


 自分で出した結論に思考が止まりかけたレオだったが、銀髪の女性の声に我に返り慌てて返事をする。


「そうか。……では表の戦者を動かしてもらおうか? 戦者を動かせるのは戦師のみ。お前が本当に戦師だったら表の戦者を動かせるはずだ」


「あー……。それは別にいいんですけど、その前にコレを食べてもいいですか?」


 初めて会った時から強引に話を進めていく銀髪の女性に、いい加減空腹の限界だったレオがカルゥを指差して言う。すると彼女は一瞬虚を突かれた表情になった後、彼のまだ一口も食べていないカルゥと床に落ちたスプーンを交互に見てから、レオの隣の席に座った。


「まあ、いいだろう。おい、店員。私に果実水とコイツに代わりのスプーンを」


「は、はい!」


 銀髪の女性は近くにいた従業員に注文を出すと、注文を出された従業員は今までの銀髪の女性の様子から彼女には逆らってはいけないと感じたらしく、急いで厨房へと行ってすぐに果実水とスプーンを持って戻ってきた。


 代わりのスプーンを受け取ったレオはようやくカルゥを一口食べることができた。突然の銀髪の女性の登場によってカルゥはすっかり冷めていたが、それでも今まで食べたどの料理よりも美味しく感じられた。


 銀髪の女性は最初、無言で果実水を飲みながら横目でカルゥを食べるレオを見ていたが、彼が半分程食べたところで口を開いて話しかける。


「そういえばまだ名乗っていなかったな。私の名前はリア。クトシャ・リア。誇り高きサーラ王国の大貴族クトシャ家の三女だ」


『『………!?』』


(クトシャ、家? 大貴族と言っているし、周りの人達も驚いてるから凄い家ってことか?)


 銀髪の女性、リアがレオに名乗るとそれを聞いていた食堂にいた全ての人間が驚きで目を見開く。しかし名乗られた本人はクトシャ家のことを知らないため曖昧な表情を浮かべており、それを見たリアが呆れたようなため息を吐いた。


「我がクトシャ家を知らないとは何処の田舎者だ? まあいい。それで? お前は一体何者だ?」


「俺? 俺はシンハ・レオ。西にある辺境の村を治めているシンハ家の者だよ」


「シンハ家? そんな家など聞いたことも……いや、待てよ……?」


 何者かと聞かれたので答えたレオに「そんな家など聞いたこともない」と言おうとしたリアだったが、どこかでシンハの名前に聞き覚えがあったのか言葉を止めて何やら考え始める。


「シンハ……シンハだと? お、おい? レオとか言ったな。まさかお前の母親はの名前は……シンハ・シィラか?」


「え? 何で義母さんの名前を知っているんだ?」


「……………!?」


 しばらくの間何かを考えていたリアがいきなり義母であるシィラの名前を口にしたことにレオは驚いた顔になって聞き返すが、リアの方は彼以上に驚いた顔となっていた。


「し、シンハ・シィラの息子だと? 『あの』伝説の女戦師シィラの?」


「伝説の女戦師? 義母さんって有名人だったの? というか戦師って本当?」


「何故息子のお前がしらないのだ!?」


 自分の義母がこの王都の有名人で、しかも戦師であった事を知らされていなかったレオが思わず聞き返すと、リアの怒声が食堂に響き渡った。

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