サーラ王国の国民食、カルゥ

 アルマーンの街道は有事の際に戦者がすぐに出撃できるよう、戦者が二体横に並んでも余裕があるくらい広く作られている。その街道で衛兵から王都に入る許可をもらったレオは、一人の例外もなくこちらを見上げてくる通行人を踏み潰さないよう、慎重に戦者を進ませながら周囲を観察していた。


「凄いな……。こんなに沢山の人を見たのは初めてだ……」


 サーラ王国の中心であるアルマーンは、当然ながらラウマが治める村とは比べ物にならないくらい大勢の人が集まっている。そして前世ではデスによって多くの人類が殺されていた為、ここまで多くの人が集まっている光景を見るのが初めてなレオは、思わず感動したように呟いた。


「確か……。鉄の学び舎はアルマーンの東側の端にあるんだっけ?」


 過去に鉄の学び舎に在籍していたことがあるシィラの話を思い出しながら戦者を進めていたレオは、街道にある一軒の食堂の看板を見つけた。


「そういえばそろそろ昼か……。一回くらいはお店で食べてもいいよね?」


 食堂の看板を見ながらレオは誰かに訊ねるように呟く。


 ラウマが治める村からこのアルマーンまで戦者に乗っても五日かかっていて、それまでの食事はずっと携帯食料ばかりだったので、そろそろ携帯食料じゃない食事が恋しくなっていた。幸い村を出る時にラウマからサーラ王国の通貨をいくらか受け取っており、レオは現代に生まれ変わって初めての外食をすることにした。


 食事をすると決めたレオは、食堂の手前で通行人の邪魔にならないよう戦者を止めると、周りの人達の視線を無視して食堂に入り、空いているテーブルに座ると注文を出した。


「すみません。『カルゥ』を一つ。米、多めで」


「は、はい! 分かりました」


 戦者に乗ってやって来たレオの注文に、彼と歳が近そうな女性の従業員は若干驚いた様子で返事をして厨房に向かっていく。


 カルゥというのはサーラ王国の国民食である。


 豆や野菜を煮込んで香辛料で味と香りをつけたスープを米にかけて食べる料理で、作るところによって使う野菜や香辛料が異なるので味が違っている。そしてこのような食堂ではスープの作り置きがあるので、注文してすぐに食べたい時には丁度良い料理であった。


「お待たせしました」


「はい、ありがとうございます。……おお」


 先程注文を受けた女性の従業員がカルゥを持ってきて、カルゥを受け取ったレオはスープの入った皿を見て感嘆の声をあげた。レオの家で出るカルゥは豆に二、三種類の野菜が入っているだけのスープなのだが、今出たカルゥのスープは肉に一度揚げた野菜が入っていて、これだけで満腹になりそうな豪快なスープであったからだ。


「流石王都、食堂のカルゥも立派なんだな。……それじゃあ」


 レオはカルゥをしばらく眺めた後、スプーンを手に取って一口食べようとする。しかしその時……。


「表の戦者の持ち主はどこにいる!」


 食堂に一人の女性の大声が響き渡った。

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