王都アルマーン
サーラ王国の王都アルマーン。
そこはサーラ王国の中央に位置しており、サーラ王国の交流の中心でもあった。アルマーンでは毎日、王都の住人だけでなく各地からやって来た商人達で賑わっていて、今日も祭りのような賑わいを見せていた。
しかしそんなアルマーンの住人と商人達だったがある日の午後、全員が動きと話を止めてある方向、アルマーンの東西南北にある門の一つ、西門の方を見た。
最初にその「異変」に気づいたのは、西門の付近で遊んでいた一人の少年であった。
地面に石を並べ何かの遊びをしていた少年は、並べた石が触れてもいないの揺れたのを見て最初は地震でも起こったのかと思った。しかしその揺れはある一定の間隔で起こり、徐々に強くなっていくことから地震ではないと理解した少年は、そこで揺れの「原因」に気づく。
見れば西門の向こうから一つの影が地面を揺らしながらこちらへ近づいて来ていた。影が近づくにつれてその影と地面の揺れは大きくなっていき、揺れが少年の体をも揺らす大きさになる時には、その影は西門のすぐ近くまで到着していて見上くらいの大きさになっていた。
西門に近づいてきた影は一体の戦者で、全身が太陽の光を反射して輝いて見える純白の、頭部が獅子の外見をしていた。
気がつけば少年だけでなく、西門を守る衛兵達も、アルマーンの道を行き来していた住人や商人達も全員、頭部が獅子の戦者を無言で見上げていた。このアルマーンでは王城を守る戦者を見かけることも珍しくはないのだが、これだけ美しく、そして堂々とした戦者を見たのは初めてであった。
頭部が獅子の戦者は西門の手前で止まると、操縦室がある胸部の装甲が展開して、そこから十代くらいの少年が姿を現す。戦者の操縦室から現れた少年は戦者の手に乗ると、戦者は少年を落とさないようにゆっくりと彼を地面に降ろす。
衛兵達は、今まで見たこともない戦者に乗っていたのがまだ若い少年であったことに驚きを隠せなかったが、やがて自分達の使命を思いだすと手に持っていた槍を少年に向けて問いただす。
「止まれ! お前は一体何者だ!」
「俺は西の辺境の村を治めるシンハ・ラウマの義息子、シンハ・レオと言います」
戦者から現れた少年、レオは自分よりずっと歳上の衛兵達に槍を向けられても動じることなく答え、懐から一枚の書状を取り出して衛兵の一人に手渡した。受け取った衛兵がその場で書状を確認すると、それはラウマがレオの為に用意した彼がサーラ王家の貴族の一つ、シンハ家の関係者である事を証明する書類であった。
「シンハ家? いえ、失礼しました。……それであの戦者は一体?」
レオが貴族の子息であると知った衛兵は敬語となって彼が乗ってきた戦者について質問をする。
書類には確かに貴族だけが使用する印章が押されていたが、衛兵はシンハ家という名を聞いた事がなかった。そして戦者とは基本的に軍によって管理されており、個人的に戦者を保有している貴族がいるという噂話は聞くが、それらはサーラ王国の者なら子供でも知っている大貴族ばかりである。
その事に衛兵達が疑問を感じていると、レオは頭部が獅子の戦者を見上げて答えた。
「コイツは俺の戦者ですよ。つい最近、ある遺跡から大量のルリイロカネを見つけたんです。それを使って俺は戦師になって、この戦者を作りました」
「戦者を作った!? それに男の戦師!?」
「? 何か不都合でも?」
「い、いえ! 何でもありません!」
突然驚いた衛兵にレオが訊ねると、衛兵は慌てて首を横に振った。
「そ、それで? 一体アルマーンにどの様なご用なのでしょうか?」
「はい。義父さんから戦師の適正がある者は、このアルマーンにある鉄の学び舎といつ学園に通わなければいけないと聞きました。ですから鉄の学び舎に入学するためにやって来ました」
衛兵の質問にレオは一つ頷いて答える。
これが後に「世界最強の戦師」と呼ばれるようになるレオが、初めて歴史に現れた瞬間であった。
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