戦者完成

 ルリイロカネの中に飛び込んだレオは最初こそ息苦しさを感じたが、それもすぐに感じなくなる。その代わりに今度は全身から熱を持った「何か」が染み込んでくる感覚を感じた。


 レオはこの感覚を前世で感じたことがある。これはルリイロカネが全身に入り込み、自分の肉体をただの人間から戦師のものへと変えていく感覚であった。


 やがてレオの全身にルリイロカネが行き渡り熱を感じなくなると、ルリイロカネが放つ光のせいで周りが見えないのに、自分の背後に座席らしきものが現れたのが分かった。そして彼が背後に現れた座席に背中を預けると、レオを包み込んでいた大量のルリイロカネが動き出して形を作っていく。


「……ああ、久しぶりだな。ここも」


 大量のルリイロカネが動き出してから数秒後。光が収まってレオが目を開くとそこはルリイロカネの中ではなく、今座っている椅子しか無い球状の空間の中だった。そこは前世でよく知る戦者の操縦室の中で間違いなく、周囲を見回した彼は懐かしそうに呟く。


 戦者の操縦方法は特に難しくない。ただ操縦席に身を預けて、自分の体と戦者の機体が一体となる感覚をイメージすればいいだけである。


 今レオが座っている操縦席は、正に彼の為だけに作られた座席であり、一切の負担無くレオの体を固定して保護する。そしてそのまま意識を集中すると、レオの体内にあるルリイロカネから彼の意思を伝えられた戦者が戦師の命令を実行した。


 まず操縦席を取り囲む球状の壁が外の光景を映し出し、次にレオの正面に小画面が浮かび上がる。小画面には彼が搭乗している戦者の全体図が映し出されていた。


 小画面に映し出された戦者は、全身が白い金属で作られていて胴体が人で頭部が獅子の外見をしており、まるで神話の獣を模した神像に見えた。


「やっぱりこの外見なんだな」


 戦者は自らを作り出した戦師の才能や力量に応じた姿となる。だから同じ戦師が作れば同じ外見をした戦者となるのは当たり前なのだが、レオは今乗っている戦者と前世で乗った戦者が全く同じ外見をしているのを見ると、不思議と可笑しくなって笑ってしまい、前世でソキウスとユンファが初めて自分の戦者を見た時の会話を思い出す。


『ハハッ! レオ獅子だから戦者も頭がライオンって、分かりやすいな。でもまぁ、俺の戦者程じゃないけど中々カッコいいじゃないか』


『そうね。それに全身純白なんて凄く綺麗。これならレオが戦場の何処にいてもすぐに分かるわね』


『おお、そうだな。そういうわけだ、レオ。戦いでヤバくなったらすぐに俺が助けてやるから安心しろよ』


(ソキウス先輩はあの言葉の通り、いつも俺を最後まで助けてくれた。そしてユンファ先輩も。……二人とも、本当にありがとうございます)


 前世での懐かしい記憶を思い出していたレオは、心の中で二人に礼を言うと気持ちを切り替え、正面の小画面を消して外へ意識を向けた。


「戦者を手に入れた以上、もうここに用はない。……雷光破・長弓爆砕矢サンダーボルト!」


 レオは完成したばかりの戦者を操作して光の矢を放つ。放たれた光の矢は基地の壁に接触すると大きな爆発を起こして壁を破壊し、外への道を作った。


「さて帰るか。……でも戦者のこと、義父さんと義母さんにどう説明しよう?」


 戦者を基地の外に向けて歩かせながらレオは、戦者に乗って帰れば両親だけでなく周り人間全てが驚くことを予想して、どのように説明すればいいか頭を悩ませるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る